パルミチン酸2

私の前の上司は、こういう飛び道具(脂肪とかアミノ酸添加剤)を好きじゃない人だったので、私も影響されてあまりこういうのを使わないオールドファッションな設計を踏襲しているんですが、それでも乳脂肪の値でペナルティがつくし、パルミチン酸は本州だと使わざるを得ないことが多い気が。これ見つけた人凄いな。

今週はコーネルの酪農栄養ショートコースを21:00-1:00で受講していたので、とても眠かったですが、面白かったな~。アメリカに行かずとも著名な先生方の講義が聞けてすごい。

内容についてはリンク先にあるので、もし抄録が欲しい方がいたら教えてもらえればPDFで送ります。

なんか色んな最新の話も面白かったけど、Dr.Bill Weissのミネラルの話、それぞれのミネラルの拮抗作用とか相互作用とか聞けて面白かった。こういう基本のところ、かつNRC以上の話って聞けるところ、少ない気がする。餌屋なのに恥ずかしいけどあんなにKで飲水量変わるとか、モネンシンのミネラル吸収への影響とか知らなかった。

Dr.Rick GrantのFeeds and feeding environment も面白かったな。現雪印の椋本さんのセミナー↓を思い出した。

http://rakusouken.net/topic/023_4_slides.pdf

しかしスポンサーがつきやすそうな脂肪酸とかアミノ酸の研究って、どんどんゴリゴリすすんでいくけど、スポンサー付きにくそうなNDFとかStarchの研究ってゴリゴリ感が薄い気がする。とっても大事なのに。最新のDr.Shaverの講義とか聞きたいよ

気が向いたら今回の講義の概要をまとめたい・・・!

https://ansci.cals.cornell.edu/advanced-dairy-nutrition/

ちなみにDr.Shaverは私の前の上司の師匠で、是非この講義はみんなに見てもらいたい。めっちゃ面白い。いつか勝手に日本語訳したい。

The Nutritionist 2015 Webinar Series Dr. Randy Shaver: Starch Digestibility, July 8, 2015

しつこいけどフレッシュ期にはパルミチン酸はあげないほうがいい

この話は前も見たけど。フレッシュだけ別飼してるところなら、パルミチン酸はフレッシュへの給与はやめたほうがいい、けど、TMR1種類の1群管理とかだとやむなしか。

泌乳初期(フレッシュ~ピークの通期)のパルミチン酸添加はDMIに影響なくECMを増やす(フレッシュ期:CON51.9kg,PA56.6kg,P=0.02(ピーク期:CON57.8kg,PA62.3kg,P<0.01))。

またフレッシュ期の体重を減少(CON709kg,PA668kg,P=0.05)させる。しかしピーク期では体重減少はみられない(CON684kg,PA673kg,P=0.93)。

フレッシュ期ではパルミチン酸添加で有意に血漿インスリン濃度低下(CON0.24μg/L,PA0.21μg/L,P=0.05)、血漿NEFAの増加(CON0.59,PA0.65,P=0.03)もみられた。

ちなみにこの時のフレッシュ期の定義は分娩後0-24日、ピーク期の定義は分娩後25-67日を指す。試験区は対照区(CON)と、対照区の大豆皮をパルミチン酸に置き換えてDM中1.5%給与したPA区(C16:0が85%を占めるサプリメント)の2区で試験を実施。

•Title:M29)Effect of timing of C16:0 supplementation on production and metabolic responses of early lactation dairy cows.
•Author:J.de Souza and A.L.Lock. 引用:ADSA 2017年ProceedingP16

その理由はフレッシュ期のパルミチン酸添加は脂肪組織の脂肪分解・炎症を促進するから

えーそうなんだ

泌乳初期の牛へのパルミチン酸給与が脂肪組織の脂肪分解と炎症マーカーに及ぼす影響について調査した。16頭の経産牛で、対照区(CON)、分娩から24日間パルミチン酸をDM1.5%給与するPA区を用意した。

対照区と比べてPA区は、皮下脂肪において脂肪分解に関連する遺伝子(LIPE,P<0.05/ABHD5,P<0.01/FABP4,P=0.05)の発現が増加。

また対照区と比べてPA区はTNE(P<0.01),SIRPA(P=0.05),IL6(P=0.07)を含む炎症関連遺伝子の発現が増加。

フレッシュ期のパルミチン酸給与による脂肪分解遺伝子発現の増加が体重の減少、乳量およびECM増に関連していると考えられる。加えて炎症を増悪している可能性がある。

•Title:T269)C16:0 supplementation alters markers of adipose tissue lipolysis and inflammation in early lactation dairy cows.
•Author:J.de Souza ,C.Strieder-Barboza ,G.A.Contreras ,and A.L.Lock. 引用:ADSA 2017年ProceedingP326-327

長期間の給与効果:初産では乳生産より体重増加顕著、経産では乳脂肪増加顕著

パルミチン酸は意地でも乳脂肪に出ていきそうだったけど、初産で増体にエネルギーが必要ならそちらに使われるというエネルギー配分になるんだな、意外と柔軟

長期間のパルミチン酸給与が初産、経産牛それぞれの生産性に及ぼす影響について調査した。

試験牛は産次数、乳量、BCSでブロック分けし、対照区は脂肪添加なし、パルミチン酸給与はPA区としDM1.5%給与を10週間続けた。対照区は大豆皮と置き換えた。

対照区と比べてPA区でDMI,乳量、乳脂肪割合、乳脂肪収量、C16脂肪酸収量、ECM、飼料効率が有意に増加した。

産次ごとにはPA区の経産牛ではECM、乳脂肪収量の増加程度が大きく、逆にPA区の有意な体重増加は初産でのみ見られた。

•Title:T270)Long-term effects of C16:0 supplementation on production responses of lactating dairy cows.
•Author: J.de Souza and A.L.Lock. 引用:ADSA 2017年ProceedingP327

他の脂肪酸とのブレンド効果:ステアリン酸との併用で相乗効果、なし。

パルミチン酸+ステアリン酸 VS パルミチン酸 なら、今のところパルミチン酸は 単体で使うのが良さそう。

パルミチン酸単体よりもステアリン酸と混ぜた方が利用効率が高まるんではという説があったので試してみたけど、パルミチン酸単体のほうが生産性は向上したという報告。

試験区は脂肪酸添加なしの対照区(CON)、脂肪添加はDM1.5%、CON区の大豆皮と置き換えてパルミチン酸区(PA区、82%パルミチン酸)、パルミチン酸とステアリン酸混合区(MIX区、市販品:エナジーブースター100)の3区を設定。

PA区でのみ乳脂肪収量、ECM有意に増加。その理由はDM,NDF,総FA消化率がPA区でのみ有意に高かったから。

特にパルミチン酸添加でNDF消化率が上がるというのは数々報告がある、これは腸管からのコレシストキニンの分泌が促進されて内容物がルーメン内に滞留する時間が増えるからではといわれているよう。(でもDMIにには影響ない)。ステアリン酸では全くそんな効果は報告なし。

またパルミチン酸添加で総脂肪酸消化率が上がるというのも他の論文でも報告あり。ステアリン酸は一般的に逆に添加するほど消化率下がることが報告されている。なぜパルミチン酸添加で、他の脂肪酸、パルミチン酸自体も消化率が上がるかは明確にはわかっていない。

Effects of commercially available palmitic and stearic acid supplements on nutrient digestibility and production reponses of lactating dairy cows.J.Dairy.Sci.103.5131-5142.

他の脂肪酸とのブレンド効果:高泌乳ではオレイン酸とブレンドした方が👍

これ日本だとパルミチン酸とオレイン酸(cis-9 C19:1)がこの比率でブレンドされてる製品、もしくはブレンド出来る製品って無い・・・よね?

オレイン酸あげたほうが体重、インスリン増って。前述にパルミチン酸はインスリン下げるって報告あったけど、この効果は拮抗しないんだろうか。これについてはもう少し引き続き勉強する。

飼料中のC16:0とcis-9 C18:1比率を変えた時の生産性とエネルギー配分への影響を評価した。供試牛は乳量ごとに分け12頭を3群に分け、低泌乳(45.2kg±1.7kg/d)、中泌乳(53.0±1.6kg/d)、高泌乳(60.0±1.9kg/d)とした。

脂肪酸はDM1.5%添加し、試験区は4区画設定。C16:0対cis-9C18:1比率は1)80:10 2)73:17 3)66:24 4)60:30 とした。

結果、cis-9 C18;1比率を増やすほど・・・

低泌乳:直線的にFCM,ECM、乳生産へのエネルギーアウトプット、乳脂肪収量が減少

高泌乳:逆に直線的にこれらが増加。加えて、乳量、乳蛋白収量、乳糖収量も増加。

高泌乳牛の反応cis-9C18:1が多いほど良くなった。一方、低泌乳牛の反応C16:0が多いほど良くなった。

加えて生産レベルに関係なく、脂肪酸のcis-9C18:1の増加体重(P=0.02)とBCS(P<0.01)を増加させた。

・脂肪組織では給与cis-9C18:1が増えるとC18:0,cis-9 C18:1増加C16:0は減少

・脂肪組織のcis-9 C18:1濃度体重の変化、脂肪組織のcis-9 C18:1濃度血漿インスリン濃度正の相関あり

給与cis-9 C18:1比率増 → 脂肪組織cis-9 C18:1増&体重増&インスリン増

•Title: 261)Altering the ratio of dietary C16:0 and cis-9 C18:1 interacts with production level in dairy cows:Effects on production response and energy partitioning.
•Author: J de Souxa and A.L.Lock 引用: ADSA 2017年ProceedingP221

•Title:T271)Altering the ratio of dietary C16:0 and cis-9 C18:1 modifies the fatty acid profile of plasma lipid fractions and adipose tissue.
•Author: J.de Souza ,C.Strieder-Barboza,F.Eerdun,G.A.Contreras,and A.L.Lock. 引用:ADSA 2017年ProceedingP327

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