糞洗いについて

ワタシと糞洗いの歴史

・・・そんなに深くない。笑。

最近、糞洗いする人、めちゃくちゃ増えた気がする、たぶん餌屋、普及所さんだけでなく、添加剤系のセールスさんたち、それから薬屋さんのセールスさんたちが全国でやるようになって久しいので全国的に「糞洗い」というものがメジャーになってきているのではないかと思うのですが、どうでしょうか。

私は3年前くらいまでは、糞洗いについては否定的、でした。

というのも、やり方は人によって違うし水圧も違えば結果も変わる、海外の記事では糞の重量は乾物で見る必要がある(乾燥させて測らないと正確ではない)と見たから。せめて大きい篩で、トウモロコシがどの程度出てるかとか、ムチンがあるかないか、とかそれくらいが関の山ではないかと思っていたのです。

転機は山下先生が、ダイジェスチョンアナライザーできちんと定量的に、一律に糞の容積を決めてアプライし、網残渣の測定も小分けにみかん大にして手で水を絞って重量測れば、その粒度比率もかなり正確だよっと教えてもらい興味を持ち、糞洗い有志の会(糞友会)で手順をある程度統一化し、やってみると。たしかに。牛群に感じる変化を、糞の粒度という数字からもつかめる印象でした(印象なのでね、科学的ではないのですけども)。

そして、私の手のサイズではみかん(小)に小さくして水を絞って各段の比率を算出すると、現場での重量測定値と、乾燥重量(60度48時間)もほぼ比率は同じ比率(全体に対する上段、中段、下段の比率)であるということもわかりました。

とても疑い深い私ですが、自分でかなりのサンプルを検証してみて、納得しました笑。そのため、私はダイジェスチョンアナライザーを好んで使うようになりました。

今のところ、乳成分、餌の物理性、牛の反芻、牛の全体状態、糞洗い、これらを総合的に見ることで牛の状態を群として把握する、糞洗いはその精度を上げるひとつのパーツになりえる、と考えています。

💩にまつわる海外の知見

・海外でも糞を篩で洗う、というのは繊維の消化性、デンプンの消化性を見るのに有用とは言われているものの、繊維の場合は長い繊維が残っていないか、デンプンの場合は糞のデンプン含量についての知見が多く、ダイジェスチョンアナライザーを使った数字的な指標はほぼないに等しい(NASCOの推奨値があるくらい)と認識しています。一応ナスコの出してる基準があるけど。

・たとえばU.S. Dairy Forage Research Center のmanure evaluationの中に0.5インチ=1.3cm以上の粗いものがないといいよねぇというような記載

Microsoft PowerPoint – 031108 manure evaluation_Hall (usda.gov)

・ちなみに糞中デンプンはウィスコンシンのDr.Shaverたちがかなり報告を出しており、デントコーン地帯では乾物で5%以上あったらアウト、糞中デンプン=デンプンの総消化管消化率とリンク、=つまり乳量とリンク、というデータを出しています。

・糞中デンプンは日本ではたぶん測定できる場所がないので、海外ラボ(デイリーランドとかカンバーランド)にお願いするしかないのが悲しいとこです。これ測るのも、サンプリングもノウハウがいるんです。

Fecal Starch – Dairyland Laboratories, Inc. (dairylandlabs.com)

Fecal starch analysis: A closer look – Progressive Dairy

Fecal starch analysis: A closer look – Progressive Dairy

糞洗い友の会の標準手順

まず科学的に検証するには糞洗い方法を、糞友会では統一する必要があると考えこのように決めました。ただ水圧も決めとけばよかったかしら、と思っています。

あと、中段洗い(上段が多いので上段を外して中段にだけシャワーぶっかける)すると、中段比率変わることも確認したので基本なし派です。

糞洗いをしていると出てくる疑問

結果の解釈、これ総合判断だからムズカシイのですが、基本的には上段、中段が多い=未消化物が多い=望ましいことではない、と理解しています。

その中でも、「中段」だけドカッと増えた、とかですね、「上段」だけドカッと増えたとかですね、なかなか解釈が悩ましいことがあります。採食量の変化や反芻の変化、乳成分など、他の要素と一緒に検討することがマストです。

その中の一つでよく話題に上がるのがこちら

・おはじき状のもの、宿便とか、ムチンの残骸とかいう人もいるが、何か糞の塊でタピオカという人もいる、まん丸ではないことももちろんあり、大きさは1cm以下、糞を洗うと出てくる塊、があるがあれは何か

→後者の疑問について回答が降臨したかも!しれません!それがこちら

Back-end biology: How manure screening is a vital tool for nutritionists

back -end biology って良い名前じゃない?内容をかいつまんでみますと

・長年、反芻と発酵の飼料の評価として糞洗いは乳成分、デノボ脂肪酸、糞中デンプン評価、PSPS、などと組み合わせて、牛群評価に使われてきた。

特に、反芻量の指標、となり、有効繊維、通過速度、飼料動態のバランスがわかる。使い方は、日々のモニタリングにも使えるし、トラブルシューティングに使う栄養士もいる。

ただし具体的な科学的データには不足している。

★マニュアースクリーニングの使い方:ナスコのダイジェスチョンアナライザーが一般的。

1,比率を経時的にモニタリング、通過率・穀類の加工・繊維の発酵性を評価

2,粗飼料の変化や季節の変化を評価

3,メニュー変更前後でのルーメン発酵の評価

上段の解釈

・繊維が全体的に多い場合、ルーメンのシンクロがうまくいっていない「poor rumen synchronization」サイン未消化繊維(uNDF240が高い)が多いか繊維消化菌の餌になるルーメン内アンモニアが十分でない可能性。またデンプン源についても、硝子質デンプンレベルの高いトウモロコシや、それらの加工度が低い場合、上段にそれらが残ることも。PSPSでいうところの1段目(18mm)2段目(8mm)に相当し上段割合が25%-40%あるとかなり乳量の確保は難しい。

マイコトキシン、エンドトキシン、ルーメン機能低下、アシドーシスがある場合、ムチンキャストが見られる場合もある。繊維状で虫のような赤い物質は不適切なルーメン環境の結果、剥がれ落ちた腸内膜の残骸であり、早期警告のサイン。

・そのほかに、ゼラチン化したデンプン「gelatinized starch」(figure1)で、これは後腸発酵の兆候「a sign of hindgut fermentation.」であることが多い。これは後腸での繊維とデンプンの消化不足でありルーメン内で十分に発酵しなかった結果である。

Back-end biology: How manure screening is a vital tool for nutritionists – Progressive Dairy
Back-end biology: How manure screening is a vital tool for nutritionists – Progressive Dairy 引用
ムチン Microsoft PowerPoint – 031108 manure evaluation_Hall (usda.gov)

中段の解釈

・第2スクリーンの割合は、PSPS同様、乳量、乳成分の両方に正の相関があるとされている。割合が20%未満であれば、可消化繊維と非繊維質の炭水化物が多く含まれる、発酵の早い飼料であることを示す。この場合、乳量が高いが乳脂肪、乳タンパクが望ましくない場合も。また35%を超える場合は、繊維発酵が不十分、これはルーメンpHが急速に低下し繊維分解菌の増殖に適したルーメン環境ではないためである。

Back-end biology: How manure screening is a vital tool for nutritionists – Progressive Dairy

下段の解釈

・ボトムスクリーンの解釈は、PSPSのボトムと高い相関関係にあり、発酵の早いNFFSやデンプン、が多いとボトムが多くなり、年間を通じてボトムが50-60%の牛群は乳量が多く繁殖もよい。これには飼料バランス、原料の発酵率(kd)、の知識が重要になる。

Back-end biology: How manure screening is a vital tool for nutritionists – Progressive Dairy

乳牛の栄養は飼料ソフト、牛群分析、遺伝が発達しても、バックエンドの生物学はトラブルシューtリング、収益改善に大きく寄与することができ、汚い仕事ではやらねばならない、と締めくくられていました。

まとめ

まだまだPSPSなどに比べると科学的根拠に乏しい糞洗い、ダイジェスチョンアナライザーですが、こうして少しずつ知識を積みかさねて、また可能であれば国内での事例を積み上げて、より科学的評価が出来るようになるといいなぁと思います。

そして、「ゼラチン化デンプン」。確か英語だとデンプンの(βデンプンからαデンプンに形態が変わる)アルファ化のことをゼラチン化というけれど、、、今回の場合は未消化のデンプンが異常発酵した状態をゼラチン化と称しているのだろうか、どうしてそう定義したのか根拠を知りたいなぁ、このオルテックの筆者に質問してみようと思いますが、これまでのタピオカ、おはじきが出てくる=良くない状況、という現場の印象は正しく、後腸発酵産物であるということは現場での印象と照らし合わせてもこの情報の精度は高いのではないかしら、と思っています。

コメント

  1. 内田勇二 より:

    先日はありがとうございました。
    糞洗い 私は 我流 ですが このようにルールを決めてやるとおそらくかなりいいツールに
    なると思いますね。流石ですね。
    私は 我流 のやり方で 同じ農場で 同量の糞を 同じように(かなりな圧で流しますが)を心がけます。ただ確実に粗飼料分析、飼料設計 当然 牛群観察 あと 農場主、あるいは従業員 または同行するセールスパースンが糞洗いに興味があることが前提ですね。 これに興味を持つと、何だか農場の取り組みが変わる気がしています。 その意味では かなりインパクトのあるツールです いつも素晴らしい情報ありがとうございます。

  2. Risa より:

    内田先生

    そうですね、餌(入れるもの)、出るもの(糞と乳)を両方確認することで、よりその牛群を理解できるといいなと思っています。あまり糞の変化がないと確かにつまらなくてやめてしまうかもしれませんが、結構なんだかんだと(暑熱、だったり粗飼料の変化だったり、メニューの変更だったり)なんだかんだあると、糞もなんだかんだ変わるので、やはり定点観測は面白くてやめられないです。

タイトルとURLをコピーしました