哺乳期の発育、もしくは代用乳給与体系などが乳量増加につながる、もしくはつながらないというこの辺の論文はめっちゃいっぱいあるのでいつかまとめようと思いつつ。
現状の私の理解は、哺乳期の発育増加⇒乳量増加、これはいろいろな文献でもほぼ間違いない。
ただし、代用乳を多給⇒乳量増加、に繋がるか否かというのは賛否両論あって。
これは代用乳を多給しても、哺育育成期のDGが高まっている論文もあれば、育成期には多給していない対照区に体重で追いつかれている論文などもあり結果色々。
つまり、結局のところ「代用乳多給体系」がやみくもに乳量を増やすのではなく、「代用乳多給が哺育・育成前期あたりまでの増体アップに着実につながった場合」は乳量増という結果になっている、ということかなと理解している。
なので、もちろん結局代用乳多給が哺乳期の増体アップにはかなりの割合で寄与するんですが、それだけではなくてしっかりと初期からスターターを食い込ませて離乳~離乳移行期もうま~く飼うことが最終的に哺育育成期の増体を通期で底上げ⇒からの初産乳量増につながると考えています。
やっと本題 なぜ哺乳期の増体を高めることが初産乳量増加につながるのか
普通に考えると、哺乳期に大きくしておくことで分娩前体重も大きくて乳量が望めるというサイズ感的な話かと思いがちですが、もっとエピジェネティックな理由があるとか海外の先生は言ってました。
エピジェネティックといわれると、全然ピンときませんが私は「持ってる遺伝子の中でもそれらが全部発現するわけではないので、どれがどのように発現するか、が、後天的な要因に支配されること」というイメージです。
そういわれても具体的になんで?という疑問に答えてくれたのがこちら。
哺乳期高増体⇒乳腺重量増(そのキーはエストロジェンかも)
(引用)代用乳を制限した場合(制限哺乳)と増強した場合(高栄養)の、成長と乳腺発達への影響に加えて、外因性エストロジェンへの反応と乳腺にどのような影響が出るか、を上の2報で報告しています。
※ちなみに「エストロジェン」を追加投与するアイテムとして選んだ理由としては、これまでの報告で、子牛ではもちろんエストロジェン濃度は低いのですがエストロジェン産生する卵巣を摘出した場合、もしくはエストロジェン拮抗薬を投与した場合の乳腺発達が著しく減少したことからこれがキーになっていると考えたようです。エストロジェンは離乳後2週間インプラントで投与されています。
試験区設定は、①R:制限哺乳(CP20%fat20%の代用乳を450g/日)②R-E2制限哺乳+エストロジェン③EH:高栄養哺乳(CP28%fat25%の代用乳を1130g/日)④EH-E2:高栄養哺乳+エストロジェン。8週間哺乳したのち、離乳、試験終了時(離乳+2週間)にそれぞれ6頭ずつと殺。
結果は、発育は高栄養のほうがADGは有意に高く、制限哺乳区に比べ乳腺重量も5.2倍。更にエストロジェン感作で制限哺乳区でも高栄養哺乳区でも、乳腺重量は増加し、④が最も乳腺が発達していた。

哺乳期高増体⇒乳腺重量増加、& エストロジェンに反応して乳腺重量は増加する。
「哺乳期の高増体」と「エストロジェン」は、それぞれ明確に乳腺の発達に繋がっていたようです。ではなぜ、高増体(高栄養)なほうが乳腺が発達するのか?
なぜ哺乳期高増体で乳腺重量が増えるのか
(引用)試験区は上の2報と同じ。本報では乳腺上皮細胞でのエストロゲン受容体α(ESR1)およびプロジェステロン受容体(PGR)の発現、細胞増殖程度(BrdUを使用)を比較した。
結果、高栄養哺乳区(EH区)では特にエストロジェンレセプターを持っている細胞数は変わらないものの、レセプターの発現(1細胞あたりの発現強度)が高くなっていた。&プロジェステロンレセプターの発現強度も高く+乳腺上皮細胞の増殖も盛んに。

左はエストロジェンレセプターで有意差なし、右はプロジェステロンレセプターで制限哺乳区でなぜか有意に高い

左のエストロジェンレセプターの1細胞あたりの発現強度は高栄養哺乳区で有意に高まっていた
右のプロジェステロンレセプターの発現強度も一応有意に高栄養哺乳区で高まっていた
現状、「高栄養にすること⇒エストロジェン、プロジェステロンのレセプター強度が高まる(1つのレセプター発現細胞に発現してるレセプターの数が多い、いうなればホルモンをキャッチするアンテナ数が増えるようなイメージでしょうか)⇒乳腺重量増加」というところまで分かってきたようです。
高栄養の場合と制限哺乳の場合の血中のエストロジェン濃度も違ったりするんでしょうか、更に突き詰めてなんで?なんで?と考えていくときりは無いのですが、まずここまで突き詰めることが凄いなぁ、こうやって1つ1つ解明されていくんだなぁとなんだか感動します。
コメント