ここらで一度、腰を据えてパルミチン酸についても勉強してみる。
脂肪酸は沼が深い・・・ぴえん・・・
赤ライン:引用 青ライン:考察 黄色ライン:わたし
パルミチン酸給与上限
パルミチン酸製剤(エナザイザーRP-10) 0g-1500g(0,500,100,1500g)/日/頭給与で試験、パルミチン酸の添加で乳脂肪、乳量は有意に増加。添加量による違いはなし。DMIは500g区で最大に。
=効果は容量依存性じゃないなら最大でも500g給与で十分だな!ってか、それでもこんなあげてるとこ無いわ
=ただしこれは16日間のショート試験なので、この報告だけで農場レベルで500gやっても長期的にDMIに問題ないか?というのを担保できない。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17235176/
パルミチン酸と脂肪酸カルシウムの使い分け
パルミチン酸給与区とパーム油の脂肪酸カルシウム給与区の2区を設定。
経産、高泌乳牛にそれぞれ脂肪酸としてDM2%になるよう、パルミチン酸(パルミチン酸85%のベルガファット100)と脂肪酸カルシウム(メガラック)を給与。乳量と乳脂肪はパルミチン酸給与区で有意に増加。
脂肪酸カルシウム区では乳脂肪低下はまだ起きていないものの、乳脂肪低下リスク増:de novoFAの減少およびtrans-10C18:1,trans-11C18:1,cus-9,trans-11CLAの増加
=パルミチン酸で乳脂肪は上がる。脂肪酸カルシウムは不飽和脂肪酸も含まれるから使う量によっては乳脂肪低下リスクありで要注意ってとこか。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25022691/
単体の脂肪酸ではなくTGタイプのパルミチン酸(ベルガファットT-300)とパーム油の脂肪酸カルシウム(メガラック)の給与を比べてみた。試験区は、何も添加しない対照区、パルミチン酸(TG)区、脂肪酸カルシウム区の3区、脂肪サプリメントはどちらも脂肪酸としてDM中1.5%になるよう設定。
パルミチン酸(TG)は乳量、乳脂肪収量が有意に増加。
脂肪酸カルシウムは脂肪酸消化率が有意に増加&体脂肪へのエネルギー配分が増加。(体重有意に増加、BCSは増加傾向)
オレイン酸がステアリン酸の小腸での消化;ミセルへの取り込みを向上させてる可能性についてFreemanらによって報告されてるけど今回も同じこと起きてたかも。
★脂肪酸カルシウム区は、飼料中の不飽和脂肪酸量が多いため、ルーメンの水素添加能力を超え、水素添加経路をt-11からt-10へ変えてしまったと考えられる。これがエネルギー分配に影響を及ぼし、乳生産へのエネルギー分配が減少し、体脂肪蓄積に働いたと考えられる。今回は同じくt-10水素添加経路で増加するtrans-10,cis-12 C18:2は測定していないが、Harvatineらはtrans-10,cis-12 C18:2を第4胃へ注入することで脂質合成酵素の発現が、乳腺では低下し、脂肪組織では増加したことを報告している。
=脂肪サプリメントの使い分けとしては、乳脂肪を増やしたいならパルミチン酸、体脂肪へのエネルギ配分を増やしたければパーム油の脂肪酸カルシウム(ただし乳脂肪低下リスクには気を付けて)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29397168/
高泌乳、低泌乳牛それぞれにパルミチン酸(BergaFat F-100/パルミチン酸84.8%,オレイン酸8.3%)、パーム油の脂肪酸カルシウム(メガラック)を給与して反応を比較した。
試験区は脂肪添加なしの対照区、パルミチン酸区、脂肪酸カルシウム区の3区設定。かつそれぞれ低泌乳区と高泌乳区を設定しているので計6区。それぞれ脂肪酸としてDM中2%添加。
パルミチン酸は高低泌乳いずれも、乳量、乳脂肪に有意差なし。
脂肪酸カルシウムは高泌乳牛でパルミチン酸区に比べて有意に乳脂肪濃度低下、ただしこれは低泌乳牛では見られず。高泌乳牛のみ顕著に乳中のtrans-10 C18:1、trans-10,cis-12 CLAがパルミチン酸区に比べ増加。
短期間給与ではパルミチン酸添加は乳量、乳脂肪収量を増やさなかったものの、飼料効率を改善し、他の不飽和脂肪酸を含む脂肪サプリメントに比べてルーメン内水素添加経路に変化なく乳中のパルミチン酸を増やした。
★脂肪酸カルシウムで高泌乳だけ乳脂肪低下した理由は、不飽和脂肪酸との関連が推測されていて、高泌乳はDMIも高く消化管通過速度も速い、そのためルーメン内でも水素添加しきれず流される不飽和脂肪酸中間処理体が多く発生し、より顕著に不飽和脂肪酸由来の乳脂肪低下が起こった可能性。
★パルミチン酸で乳脂肪が増えなかった理由は、denovo脂肪酸の減少とpreformed脂肪酸の減少が理由と思われる。過去色々報告があるが、パルミチン酸で乳脂肪増えるか否かは、「denovo脂肪酸合成とpreformed脂肪酸の取り込み」にかかってる。パルミチン酸には飼料誘発性水素添加由来乳脂肪低下とはまた違うdenovo合成抑制メカニズムあるかも。
=こういうケースもあるのか。パルミチン酸が効果ない場合=denovo脂肪酸が減ってpreformed脂肪酸も減る状況って実際どういうときなのかもっと具体的に教えてくださいよ!
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24731645/
パルミチン酸の最適添加時期
フレッシュ期(分娩後1-24日)、ピーク期(分娩後25-67日)、それぞれパルミチン酸(Palmit80)添加ありなしを比較。添加なし、あり(DM中1.5%)の2区をフレッシュ期、ピーク期それぞれで設定。
どっちの期間に足しても乳量、乳脂肪収量は増えたけど、フレッシュ期からあげると体重、BCSの減少が大きいからやめた方がいい。パルミチン酸給与区はどっちの時期もpreformed脂肪酸収量が高い傾向。体重ロスはおそらくこれに関連。
フレッシュ期とピーク期のパルミチン酸への反応の違い、体重の減り方の違い(体脂肪動員の程度の違い)はフレッシュ期のほうが顕著で、これはインスリン抵抗性の違いか?
既報(de Souzaら)でフレッシュ期のパルミチン酸給与は血中のNEFA上昇とインスリンの低下が報告されている。
=パルミチン酸ってそれ単体が乳成分に移行するだけじゃなくて、インスリンだの内分泌系にも働いちゃうんですか(?)。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30527982/
難しい!書かないとソッコーで忘れていきそう
とりあえず、原点に戻って、「パルミチン酸給与で乳脂肪が増える」理由として、パルミチン酸が単純に乳中に増える以外になんかメカニズムがあるのか、調べてみることにする。
それから、長鎖脂肪酸を給与してそれが乳脂肪生産に使われると短鎖脂肪酸を伸長させるときに使うグルコースが節約されて、それが乳糖に回されて乳量が増えるともデイリージャパン(2013年11月号P74千葉県畜産センター報告)に書いてあった。なるほど、エネルギーが増えたから単純に乳量が増えるのかと思ってたけど、グルコースの節約にもなるのか~
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