今年は本当に子牛関係の報告が充実!まだまだ楽しめます!
2124M Nutritional diarrhea in calves fed high solids milk replacer. 高固形分の代用乳を与えた子牛の栄養性下痢
一言で言うと高濃度代用乳では下痢が増える、またそこにカゼインとオオバコを足すと、低固形分と同等に下痢低減
●研究の目的:高濃度(18%)の大量の代用乳をホルスタインの子牛に与えて栄養性下痢を研究するモデルを開発し、栄養性下痢予防のための様々な栄養操作を評価すること
●研究デザインと結果:
試験1:8頭の子牛を低濃度・低乾物量(CON)、低濃度・高DM(LH)、高濃度・低DM(HL)、高濃度・高DM(HH)の4試験区に割り振った。下痢の治療回数は CON = 0、HL = 3、LH = 2、HH = 6 、高濃度代用乳を給与した子牛は栄養性下痢の発生率が高くなることが示された。
試験2:10頭の子牛を、低固形分代用乳、高固形分代用乳、塩化ナトリウム入り高固形分代用乳、オオバコ入り高固形分代用乳、カゼイン入り高固形分代用乳の5つの試験区に分けた。糞便の性状に差はなかった。
実験 3 では、21 頭の子牛を、低固形分% MR(PCON)、高固形分% MR(NCON)、高固形分% MR+カゼイン(C)、高固形分% MR+ オオバコ(PSY)、高固形分% MR+カゼイン+ オオバコ(CPSY)、の 5 区に分けた。NCON は PCON に比べて下痢の治療日数が多い傾向(P = 0.055)、1 区あたりの下痢の子牛数は PCON と PSY でそれぞれ 4 頭と 8 頭であった。逆に、CPSYは1治療あたりの下痢の子牛の数がPCONと同じであった(4頭、4頭)。
全体として、高濃度のDMを多量に与えると栄養性の下痢が増加することを示している。カゼインとサイリウムの組み合わせは、これらの影響を軽減する可能性を示しているが、さらなる研究が必要。
●私の思ったこと:高濃度の代用乳で下痢が起きる、っていうのは現場では感覚的にあることで、浸透圧では600mOsmまで問題ないっていう海外の報告もあるけど、この600っていう数字はただ野外での調査結果だっただけで、科学的に問題ないという根拠ではないんですよね。生乳の280mOsm以上にすると、クロストが増えて良くないという研究者もいるし、たしかに濃すぎるとクロストが増える体感がありますが、そのメカニズムは・・・固形分が多いと腸管内の嫌気度が上がるのか。また3週齢以降では自分で水が飲めるから、あまり濃くしても弊害が少ない気がします。アメリカってホエー主体だからカゼインを足すっていう試験をやるんだろうな・・日本だとすでに脱脂粉乳主体なのでここにオオバコを足すだけで良い気がするのですが・・・
2125 M Effects of tributyrin supplementation in milk replacer or calf starter on growth performance and gastrointestinal tract development in dairy calves. 乳用子牛の成長成績および消化管発達に及ぼす代用乳またはスターターへのトリブチリン添加の影響
一言で言うと…酪酸のトリグリセライドであるトリブチリンをミルクに足してもスターターに足しても消化管の発達を改善する、そうでした。
●研究の目的:子牛へのスターター、代用乳へのトリブチリン(TB)添加の影響を確認する
●研究デザイン:ホルスタイン54頭を4区に分け、代用乳・スターターいずれにも添加しない対照区、代用乳のみに添加する区、スターターのみにn添加する区、両方に添加する区、に分けた。離乳は64日齢、オスは離乳時屠畜、メスは92日齢まで試験のスターターを給与した。
●結果:
代用乳にTBを添加した場合(MR+)、回腸の陰窩の深さは減少し、絨毛長/陰窩の深さは増加した。スターターにTBを添加した場合(ST+)、回腸の陰窩の深さは減少し、回腸および空腸の絨毛高/陰窩の深さは増加する傾向が認められた。
代用乳・スターター両方に添加 の子牛は、実験期間中、総乾物摂取量が最も多かった(P < 0.05)。しかし体重および 1 日平均体重増加には影響しなかった。これらの結果は、TBの添加が子牛の胃腸の発達を改善することを示唆している!
ちなみに全酪連、広島大学、ワイピーテックの日本勢の報告でした。こういう海外の学会報告で日本人の名前を見つけると、おっ!ってなりますね!
●私の思ったこと:トリブチリンってなんだかわからなかったので調べました。あー-なるほど、tri ブチリン、なのね、つまり、酪酸のトリグリセライドでした!炎症抑制やDAOを高めるなど、腸を健康にするような報告がありました:21780291 研究成果報告書 (nii.ac.jp)。
あの、ただ、1点気になっているのですが…スターターとミルクに両方入れた区が有意にDMI多くても増体一緒っていうのはどうしてなんだろう。
2126M Effects of maternal dietary rumen-protected choline supplementation during late gestation on calf growth and metabolism.妊娠後期における母牛へのルーメン保護コリン補給が子牛の成長および代謝に及ぼす影響
一言で言うと乾乳期のルーメンバイパスコリンの給与は子牛の代謝、ストレスマーカーを改善、高容量給与では子牛の増体も高い
●研究の目的:ルーメン保護コリン(RPC)の母親への補給と投与が新生子牛の成長、代謝、および酸化状態に及ぼす影響を検討すること
●研究デザイン:ホルスタイン種の妊娠牛を3区に分け、分娩予定日の 24 日前から、RPC 45g/d(CHOL45, n = 19)、RPC 30g/d(CHOL30, n = 22)、RPC なし(CON, n = 19)の試験区を設定(この時のバイパスコリンはバルケム社)
●結果:
子牛の体重、血中BHB、グルコースには処理群間の差はなかった。CHOL45 母牛の子牛は CHOL30 母牛の子牛よりも ADG が高かった(P = 0.03);しかし、RPC を給与した母牛全体の子牛と CON との間に ADG の差は見られなかった。
CHOL30母牛の子牛はCONから生まれた子牛よりも酸化ストレス指数(ROS/AOP)が低かった(P<0.01)。CHOL45母牛の子牛では、CON母牛の子牛と比較して、ハプトグロビンが少なかった(P < 0.01)。
妊娠後期の RPC 給与は新生子牛の代謝、酸化ストレスマーカーに影響を与え、その影響は投与量に関連するものも見られたが、生後 3 週間における子牛の成長の改善にはつながらなかった。
●私の思ったこと
バイパスコリンって乳牛では乾乳にマストといっていいくらいな添加剤だと認識しているんですが、子牛にとっても有用であるそうです、これって母牛の状態改善によるものなのか?それとも、単独で何かそいういうメカニズムがあるのか?どっちなんでしょうか。もし前者なら黒毛和種では不要でしょうけれど、後者であれば黒毛和種繁殖牛にも同じことが言えれば面白いなぁと想像します。
2259T Increasing dose of prepartum rumen-protected choline: Effects of in utero exposure on growth and feed efficiency in Holstein dairy calves.
一言で言うと乾乳期のバイパスコリン給与で子牛の増体もアップ!
●研究の目的:妊娠後期の RPC 投与が子牛の成長と健康に及ぼす影響について調査すること
●試験デザイン:ホルスタインの雌子牛を妊娠中の経産牛(n = 50)を、4区:濃縮 RPC 試作品(RPC2、Balchem 社)のコリン 0g(対照、CTL)、15g(推奨用量、RD)、 22g(高用量、HD)、既存製品のコリン RD(RPC1、ReaShure、 Balchem 社、ポジティブコントロール)に分けた。
●結果:RPC2 の投与量を増加させると、生後 2 週間の平均日増体量(ADG:β = 0.0059kg/d/g コリン)および飼料効率(FE:+ 0.032%/g コリン)が直線的に増加した(P < 0.03 )。すべてのRPC 給与区は血中グルコースを増加させた。血中リポ多糖結合タンパク質(LBP)は RPC2RD の給与により減少する傾向にあった。ADGとFEが増加し、LBPとグルコースの反応も見られたことから、子宮内でのRPC2への曝露により炎症が抑えられ、成長のためにグルコースが節約された可能性がある。
●私の思ったこと:母牛の妊娠後期のコリン給与により子牛の増体、飼料効率も改善、グルコースが増えLBPが減った、とのこと。ひとつ前に紹介した乾乳期のバイパスコリン給与では子牛の増体に影響なしでしたが、これは乾乳期の給与期間などによるのでしょうか。この2259報では給与期間の記載がありませんでした。それともこの新しいプロトタイプの濃縮RPCが良いのか?!
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