一般的には初乳をパスチャライズすることは、疾病リスク低減として有用と考えられていますが、それ以外にも子牛にとって良いことがあるかも、という話。
初乳のパスチャライズで初乳中のオリゴ糖が2.6倍に
A.J.Fischerら(下記)の報告です。
(引用)初乳の加熱(60℃60分)により初乳中の牛初乳オリゴ糖(bCO)量が、未加熱のもの(FC)と比べて加熱したもの(HT)では約2.6倍になった。またいずれもオリゴ糖の種類は3′-シアリルラクトースが主であった。またそれぞれの初乳を子牛に給与すると、HT給与子牛の方が消化管内のオリゴ糖濃度は低かった。おそらく腸内細菌、とくにビフィズス菌などの有用に代謝されプロバイオティクスとして機能したと考えられる。

牛乳中のオリゴ糖は普段は脂質か蛋白と決t号して糖複合体として存在している。
熱をかけることによって、脂質、蛋白から分離して、遊離オリゴ糖が増えた可能性がある。
パスチャライズした初乳を給与するとビフィズス菌増加
60℃60分加熱⇒オリゴ糖増える⇒ビフィズス菌に利用される可能性、ということで実際に非加熱と加熱の初乳を給与した子牛の腸内細菌叢を調査したのがこちら。
海外は生後数時間でと殺までして腸管内容物や粘膜の細菌叢を調べるからすごいなぁ・・・
(引用):32 頭のホルスタイン新生子牛♂に、生後すぐに初乳なし(NC、n = 8)、非加熱初乳(FC、n = 12)、加熱初乳(HC、60 ℃、60 分、n = 12)を給与。各試験区それぞれ初乳の給与から6時間後、12時間後に4頭ずつ、と殺。結腸粘膜、内容物の細菌叢を調査した。HCではFCに比べて、結腸粘膜の大腸菌割合が少なくビフィズス菌割合が多かった。
⇒加熱処理した初乳を給与するとビフィズス菌の割合が増加するのでお勧め!
このビフィズス菌が増えた理由としては前述のオリゴ糖が増えたことが一番可能性として考えられます。
この菌叢の解析結果で主成分解析も使われているんですが、わたし不勉強でこれの読み方イマイチよくわからないのですよね・・・リアルタイムPCRでの各菌種単独の測定値の結果も載せてくれたらいいのに・・・!
早く初乳をあげることは有用菌の定着につながる
パスチャライズの話から少しずれますが、初乳を早く給与することも有用菌の早期定着に繋がるという話。陣地取りゲーム的な感じで、早く腸に届いた方が早く陣地をたくさん獲得出来るようなイメージでしょうか。
(引用):初乳給与時間がそれぞれ分娩後0時間、6時間、12時後の子牛をそれぞれ生後51時間後にと殺、大腸粘膜に付着しているビフィズス菌割合、乳酸菌割合を調べた。早く初乳を飲むほど(生後0時間以内に給与した0h区が最も菌叢内でのビフィズス菌、乳酸菌比率が高い)腸内細菌叢の有用菌割合が増える。

菌叢内におけるビフィズス菌割合(左図)、乳酸菌割合(右図)が有意に増加。
まとめ
分娩後すぐに初乳をあげることは、病原性大腸菌など悪影響と思われる菌が定着するより前に、ビフィズス菌などの有用菌を定着させることが出来る!
&パスチャライズした初乳を早めに給与で、免疫グロブリンの吸収のみならず腸内細菌にも良い影響が期待できます。
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