ホルスタイン雌の育成において、哺乳から離乳後の粗飼料給与について。どのくらいあげたらいいか、どんな草をあげたらいいか、、、
哺乳期の粗飼料給与(ホル雌)
NRC2001でも哺乳子牛への粗飼料給与は推奨されていないこと、昔のアメリカの先生たちも「哺乳子牛は単胃動物」として粗飼料給与を推奨しない指導、もあったようです。その理由としては哺乳期は粗飼料を消化できない、またスターター摂取量が低下してしまう、というデータが元になっていたようです。
しかし昨今では、粗飼料を哺乳期にも給与したほうが逆にスターター摂取量は増える、それに伴い増体も飼料効率も改善される、ルーメンpHの低下も防ぐという報告も多々増えてきており、哺乳期に草をあげるほうが良いという意見が主流かと思います。
では、哺乳期、そして離乳後に、どんな草をどれくらいあげるのがベストなのか、というのはまだ探求されつつある段階で、色々な論文からパーツを拾ってその牧場にとっての最適解を導ければいいなと思っています。
粗飼料の難しいところは、たとえば一概に「ルーサン」とか「チモシー」とかいっても品質、成分のバリエーションに幅もありますし、切断するかしないか、またどれくらいに切断するか、によっても結果に影響があるところでしょうか。輸入乾草でもそんな感じで、自給飼料ならなおのこと。
哺乳期もある程度スターター食べだしたら1日80g以上粗飼料を

引用「離乳移行期のルーメンpHとスターター、粗飼料給与の関係について調べた。1日あたりスターターを680g摂取している条件において、スターターの給与の有無はルーメンpHに関連は見られず、むしろ粗飼料の摂取量とルーメン内pH5.8以下面積に有意に負の相関がみられ、1日あたり粗飼料を80g以上摂取しているか否かがブレイクポイントであった。」
⇒1日80g以上の粗飼料摂取が離乳移行期のルーメンアシドーシスを防ぐために重要。
代用乳給与量によっては哺乳期間の粗飼料不断給餌も問題ない
引用「哺乳量が多い場合(体重の20%程度)に、哺乳期間通期を試験期間として、粗飼料を給与(不断給餌)した群と、粗飼料を給与しない群で比較すると、給与した方がDMI増加、増体には影響なくルーメン発達、ルーメンpH高くなる;平均ルーメンpH(粗飼料あり5.49 ± 0.08 vs. なし5.06 ± 0.04)」
⇒代用乳の給与水準が高ければ粗飼料を不断給餌しても全く問題ない、むしろ良い
以前代用乳給与が一律1日4リットルだったころは特に、粗飼料をやりすぎると草ばかり食べてしまうから草はあげない方が良い、もしくは制限して給与すべき、と言われていたようです。
昨今は代用乳給与水準も増えており(大体1日6-8L/頭程度の農場が多いのでは)、代用乳を多めに給与されている子牛では空きっ腹でガツガツ草ばかり食べてしまう、ということもなく、哺乳期も環境が許すのであれば不断給餌でよいと思っています。
黒毛和種でも哺乳期に粗飼料ありのほうが増体高い

離乳前後に粗飼料なしだとルーメンpHは低下

哺乳期、離乳後に最適な粗飼料の種類は・・・
草の種類はチモシー、もしくはクレインあたりが無難かと思っているのですが、どんな草が哺乳期にベストなんでしょうか・・・
以前はうちの農場で哺乳期にルーサンを給与してみたことがあり(当時はスターターのきっちり5%量、たとえば1日スターター1キロ食べる子牛ならルーサン50gを混ぜていました)、鼓張症が多発したことがあります(哺乳期の鼓張症発症率0%だったのがいきなり8%程度に)。そして粗飼料をプレミアムチモシーに変えるとまた発症率0%に。
イネ科牧草に比べて、マメ科牧草は維管束が多く円状に配置されているため、ルーメン内での乾物消失率が高い(早く崩れる)ので、子牛のルーメンにはマメ科牧草が良いのではないかというトライでしたが、失敗でした。加えて、哺乳期は代用乳、スターターで十分蛋白は供給出来ていますし、あえてマメ科を給与する必要はなさそうでした。
そういえば、Dr.Drackleyも以前セミナーでルーサンは嗜好性が高すぎて食べ過ぎちゃう可能性があるからやめたほうがいいと言ってました。
引用:「8-71日齢まで粗飼料とスターター自由採食、各粗飼料ごとに試験区を設定。子牛の粗飼料日平均摂取量はRH(46g/d)、BS(60g/d)、CS(51g/d)、TS(48g/d) 、AH(120g/d)、OH(101g/d)。AH区は他の区よりも粗飼料摂取が多く、ADG(平均日増体重)低下。ちなみに最もDGが高かったのはOH区、BS区、TS区。」
※粗飼料はカットして給与:アルファルファ(AH)、ライグラスヘイ(RH)、オーツヘイ(OH)、大麦ストロー(BS)、コーンサイレージ(CS)、ライ小麦サイレージ(TS)
離乳後の粗飼料給与は・・・
離乳後のはなし;Rumimax(Nutreco)
以前カナダの栄養コンサルタントと話をしていた時に、離乳後から2か月くらいはドライTMR(粗飼料比率15%)で、日増体重(DG)1.4kg位を目指してガンガン食わせてったほうがいいよ!これで4か月時点の体重が20-40kg位変わるよと言われ、分離給与でも上手にやっている人もいますが、群として均一にバラつきなく大きくするにはドライのTMRのほうがいいのかなぁ~とぼやっと考えていたのですが…
ちょうど離乳後、混合給与と分離給与の違いについて報告したものが調度あったので読んでみました。
混合給与 ?? 分離給与 ??

引用:「ホル雌、56日離乳設定。試験期間は4-7日齢~90日齢まで。粗飼料とスターターを自由摂取で、分離給与の場合と、スターターにカットした粗飼料加えた混合給与(スターター:クレイングラス=90%:10%)を比較した。離乳前は試験区間の差はないが、離乳後は混合給与区で増体、DMIが有意に低下。」
⇒DMI中の粗飼料の最適割合は子牛の日齢によって変化し、離乳前にはちょうど良かった(むしろ分離給与区は離乳前は混合給与区より粗飼料を食べていたのでもっと多くてもよかったのかも)離乳後1か月間においては粗飼料比率10%は多かった&分離給与のほうが単純に配合飼料を多く食べたから増体が良くなった。
※ただし粗飼料比率10%が多かったのはあくまで今回の粗飼料条件(クレイングラス、19mmカット、成分はCP10.0%,NDF68.6%,乾物ベース)の場合
他論文なども参考にすると離乳後は粗飼料比率5%位でいいようです。ただし、論文によっては哺乳期の子牛に粗飼料を自由摂取させるとDMIに占める粗飼料割合は5-30%までかなり差があるようで、これは試験に使っている粗飼料の種類、長さ、カットの有無などが大きく影響する、とのこと。
離乳後も5%ってちょっと少ない気がします。アシドーシスにならないのかな。。。粗飼料比率5%と10%の時の増体とDMIとルーメンpH推移とか調べてみたいです。
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