さらにしつこく移行乳のごり押しです。
移行乳の効果は腸管内での免疫グロブリンの病原体の捕獲による下痢低減効果のみならず、消化管発達にも寄与するとのこと。昨年の全酪連さんのマイク・スティール博士のセミナーで紹介されてました。添付した図が衝撃的でした。
初乳、移行乳(初乳と全乳を50%ずつ混合したもの)を分娩後3日間給与すると腸の成熟を促進

試験設定:それぞれ分娩後2時間後に初乳を給与してから試験スタート、
分娩後12-72時間を試験期間として12時間に1回の頻度で各試験区のミルクを給与
↑引用「分娩後3日間、”全乳のみをあげた区(C)”と比較すると、”初乳を給与した区(A)”と”初乳と全乳を半半で混ぜたもの(移行乳をイメージ)を給与した区(B)”では腸の成熟を促進、具体的には絨毛の高さアップ&消化管表面積が増加(たとえば全乳区では空腸近位において初乳区の60%減&初乳+全乳区の58%減)。血中のホルモンGLP-2とIGF-1も増加」
表面積何%アップ!とか数字で見るよりやはり写真で見た方がなんかインパクトありますよね。以前セミナーで資生堂の研究者の方も経営層にプレゼンするときはとにかく電子顕微鏡とか使った分かりやすい写真が効くと言ってましたっけ・・・
この話の興味深いところは、「初乳給与区」のほうが「初乳+全乳半半区」よりも腸管の発達が良いというわけではなく同等であること。著者も、「初乳は最初だけでよく、その後どうやって移行乳を給与するかについてを今後研究すべきかもしれない」と言及しています。初乳のほうが絶対的になんだか良さそうですが意外です。
また、なぜ初乳、移行乳のほうが小腸が発達するの?という作用機序を説明する鍵になると思われたホルモンであるGLP-2,IGF-1なのですがどうも小腸の発達よりも栄養の摂取状況のほうを主に反映するようです。
移行乳給与で増体もアップ(リンク)のメカニズムは、この腸管の成熟度の違いによって栄養吸収にも差が出てくるということなんだろうか。
初乳と移行乳のオリゴ糖
それからついでに、マイクのセミナーの時に初乳と移行乳のオリゴ糖の話もしていたのでついでに調べてみました。ちょうどマイクがセミナーで紹介していた論文がこちら↓
↑引用:「初乳中に最も多いオリゴ糖成分は3′-シアリルラクトースであり、分娩後1回目の初乳、2回目、3回目の移行乳において特に3′-シアリルラクトース、6′-シアリルラクトース濃度は高かった。」

初乳中に最も含まれているオリゴ糖

どれも初乳中に含まれるオリゴ糖の種類です。
引用のところだけ見ると、「で?」って気もするかもしれませんが、腸内細菌に有益なプレバイオティクスである初乳中のオリゴ糖。初乳にも移行乳にもめっちゃ入ってる!ってことです。もちろん常乳になるにつれ減っていきます。
初乳って色々有用なものがたくさん入ってるというイメージ通りだしそんなに新鮮味のなさそうな発見に聞こえますが、これまであまり初乳、移行乳のオリゴ糖って何がどんな種類入っているかわかってなかったそうです。
マイクのセミナーでも、↓↓(下の図D)のIgGの表と、↑↑のオリゴ糖の図(B,C)を比べると、分娩後の搾乳回数(Milkingのところの数字が分娩後搾乳回数)IgGは1発目が特濃!で、2回目の搾乳以降はがつっと一気に濃度が下がるのに対して、↑↑オリゴ糖(種類問わず)は2回目以降も結構濃度高く、移行乳を給与する意義はここにもある、という話もしていました。

ちなみにオリゴ糖以外にも、この論文は初産(Pp)、経産(Mp)の分娩後の搾乳回数ごとの乳成分とIgG濃度も載っていて面白い。やっぱり初産と経産では30g/Lくらい初乳中のIgG濃度も違うんですね。
あと、初産の初乳(1回目)で乳脂肪がめちゃ濃いのはなんでだろう・・・本文中には濃度としては初産が乳脂肪最初めちゃ高かったけど分娩後7日間のトータル乳脂肪収量としては経産牛のほうが多くなった、と書いてありました。乳量が違うもんね。
※横軸の数字が分娩後の搾乳回数です。

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