乳糖2

もう少し乳糖を変動させる要因について、勉強したい!と思って、今度はレビュー文献を読む☞引用文献を読むを繰り返した忘備録。今回は本当に忘備録・・・。意外と元論文見ると、レビュー文献でかいつまんで紹介されてた内容とちょっとニュアンス違ったりすることもあるし、、、

概略

乳糖は哺乳類の乳に含まれる主要な炭水化物、乳腺における血液と管腔の浸透圧平衡を担っている。牛乳中の主要な固形物で、その合成と濃度は主に乳房の健康状態牛のエネルギーバランスおよび代謝に影響される。

この乳成分は生理学的、生物学的要因とも関連するため、育種改良にも使える可能性がある。

・乳糖は牛乳の主要なエネルギー源として寄与

・乳糖は乳中の主要な固形分、NIRで測定が可能になったため、容易に値は分かるものの変動が少ないため他の乳成分より注目されてこなかった

SCCとの負の相関は多く報告され注目されている。

https://www.journalofdairyscience.org/article/S0022-0302(19)30424-2/fulltext

今は乳成分の測定はミルコスキャン(NIR)がほぼほぼと認識しているけど、以前どこかで乳糖は乳糖として測定していなくて、引き算で出していると聞いた記憶も。

でもカタログで見ると、ミルコスキャンなら乳糖もNIRで測定出来るようなので、今目にしているものはNIRでの乳糖測定値だと思っていいのでしょう!

NIRってホント凄い、これインライン(工場とかのラインに入れ込む)も出来るそうなので、搾乳ロボットの中にも搭載されたら、脂肪酸組成、乳成分等々、その場で個体ごとに見れちゃう。海外のデラバル搾乳ロボットでは、脂肪酸組成も見れるものもあるとか聞いたような・・・NIR搭載なのかな?

乳糖の合成と浸透圧

乳糖は、ミネラル(Na、K、Cl)とともに、血液-乳汁関門の平衡に寄与している。

・主な浸透圧調整因子。乳糖は乳腺で吸収される水の量を決定し、その結果、乳量を決定する。

・乳糖はゴルジ体で合成されるとゴルジ胞に詰め込まれ、ここで乳糖は強い浸透圧を有する。乳糖はゴルジ胞膜を通過できないからである。ゴルジ胞の平衡を再確立するには水が必要になる。

Dairy chemistry and Biochemistry. Fox, P. F., T. Uniacke-Lowe, P. L. H. McSweeney, and J. A. O’Mahoni. 2015. Dairy Chemistry and Biochemistry | SpringerLink

ゴルジ小胞内の乳糖濃度高くなると、浸透圧調節のために細胞質から水が流入する。

・水を失った細胞の浸透圧は高くなり、血液から乳腺上皮細胞へ水分の移動が起こる。

・牛乳中の乳糖濃度とNa+K濃度、および乳糖濃度とK濃度との間には負の相関があり、これらによって乳の浸透圧は一定に保たれる

乳牛管理の基礎と応用2012年改訂版 Dairyjapan P141

血液からの前駆体(グルコース)の取り込み

・乳腺上皮細胞にグルコースが取り込まれるのは、受動的かつ促進的なプロセスで、細胞膜上のグルコース濃度の下方勾配によって駆動される。これは14種類のアイソフォームが知られているグルコーストランスポーター(GLUT)を介して行われる。

乳腺では主にGLUT1GLUT8が発現、グルコースの他にマンノースやガラクトースの輸送活性を持つ優勢なアイソフォーム。

乳腺のグルコース輸送活性は、未経産牛の種付け前から泌乳期にかけて劇的に増加、それに伴ってGLUTの発現量も増加する。

・最近の報告によると、代謝率と酸素消費量の増加に起因する酸素濃度の低下が、乳腺形成中の乳腺上皮細胞におけるグルコースの取り込みGLUT1の発現を刺激する上で主要な役割を果たしている可能性がある。

GLUT1は、主に細胞膜上に存在するだけでなく 、乳腺上皮細胞のゴルジ膜にも発現し、グルコースやガラクトースの乳糖合成部位への取り込みに関与すると考えられる。

Biology of Glucose Transport in the Mammary Gland.Journal of Mammary Gland Biology and Neoplasia volume 19, pages3–17 (2014) Biology of Glucose Transport in the Mammary Gland | SpringerLink

乳糖合成(しつこい)

GLUT1と8、およびNa+依存性輸送の両方によって作動する転位の後、グルコースは一部が乳腺上皮細胞のゴルジ体に吸収され、UDP-グルコース-ピロホスホチラーゼ2とホスホグルコムターゼ-1の酵素作用により、一部がウリジン二リン酸(UDP)-グルコースに、次いでUDPガラクトースにエピマー化される。

UDP-ガラクトースはゴルジ体に運ばれ乳糖合成酵素によって触媒され、UDPフラグメントが放出される。特にβ-1,4-ガラクトース転移酵素ガラクトースの炭素原子1グルコースの炭素原子4を結合する。

α-LAの役割は、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼグルコースに対する特異性高めることなので、α-LAの濃度は牛乳中のラクトースの量と高い相関関係がある。

Dairy chemistry and Biochemistry. Fox, P. F., T. Uniacke-Lowe, P. L. H. McSweeney, and J. A. O’Mahoni. 2015. Dairy Chemistry and Biochemistry | SpringerLink
https://www.journalofdairyscience.org/article/S0022-0302(19)30424-2/fulltext

乳糖濃度Lactose percentage(%)の変動要因

・明確に報告されている乳糖濃度に影響を与える要因は産次数体細胞数

産次数に関する報告

(オーストラリアHaile-Mariam, M., and J. E. Pryce. 2017.とイタリアCosta et al. 2018の報告)

 ー初産牛では乳糖濃度高い

 ー経産牛では産次を経るごとに乳糖濃度は下がる傾向

 ー初産牛と経産牛との間の差が最も大きい

 ーこれは経産牛ではSCCが高くなる傾向と関係があるかもしれない、加えて乳糖の浸透圧機能と血液と乳汁の間の浸透圧平衡が産次によって変化する可能性もあるかもしれない

 ー乳房炎、産次、泌乳ステージ、加齢が、乳腺上皮の健常性と透過性に影響を与え、産次が上がると乳糖濃度が低下するのかもしれない※1,2

SCCに関する報告

 ー乳糖濃度(%)とSCSの表現型相関は-0.15☆から-0.66★までありSCCと乳汁電気伝導度以外で乳房炎診断のための最も役立つ数字のひとつ、電気伝導度は乳糖濃度(%)と負の関係

 ー臨床的または潜在的な乳房炎が存在すると乳糖濃度は減少SCCは増加する傾向

 ー乳房炎で乳汁中の乳糖濃度が減少するのは、主に3つの原因がある。

 ー(1)炎症や感染により分泌細胞が損傷を受け乳糖合成が部分的に損なわれる

 ー(2)血液と乳汁を隔てる乳腺細胞の基底膜のタイトジャンクションが破壊され透過性が変化一部の乳糖は尿中に失われる(浸透圧の原因となる塩類の漏出が増加 #)

 ー(3)乳腺炎の病原体が乳汁中の乳糖を基質として利用するため乳糖濃度は減少し乳汁中の乳酸は増加

 ー乳腺組織の炎症時には、Na+とCl-の増加により浸透圧バランスが保たれる。特にNa+濃度の高い細胞外環境に由来するNa+は、牛乳の電気伝導度の増加塩味の原因となる

Redirecting (elsevier.com) ★Full article: Association between electrical conductivity and milk production traits in Dairy Gyr cows (tandfonline.com)
・Haile-Mariam, M., and J. E. Pryce. 2017. Genetic parameters for lactose and its correlation with other milk production traits and fitness traits in pasture-based production systems – Journal of Dairy Science / Costa et al. 2018 Heritability and repeatability of milk lactose and its relationships with traditional milk traits, somatic cell score and freezing point in Holstein cows – ScienceDirect             ※1 Biology of Glucose Transport in the Mammary Gland | SpringerLink ※2 Oxytocin Induces Mammary Epithelium Disruption and Could Stimulate Epithelial Cell Exfoliation | SpringerLink  #Effects of Management and Genetics on Udder Health and Milk Composition in Dairy Cows – Journal of Dairy Science $ https://www.journalofdairyscience.org/article/S0022-0302(19)30424-2/fulltext
https://www.journalofdairyscience.org/article/S0022-0302(19)30424-2/fulltext

 ・レビュー文献には、潜在性乳房炎の判定には乳糖濃度、電気伝導度が最も有用である、とか、他にも乳糖濃度、SCC、電気伝導度で、機械学習させると乳房炎の予測因子になるという報告がいくつかあることも記載がありました。疲れちゃったからそれは元論文読んでない・・・。

飼料のエネルギーレベルも乳糖濃度に影響

濃厚飼料を増やす乳糖が増加

高エネルギー飼料では低エネルギー飼料より乳糖が増加

Milk production and energy efficiency of Holstein and Jersey-Holstein crossbred dairy cows offered diets containing grass silage – Journal of Dairy Science  Effects of Management and Genetics on Udder Health and Milk Composition in Dairy Cows – Journal of Dairy Science

 これはお馴染み、普通にプロピオン酸増える☞血中グルコースが増えるからだよね!

乳糖濃度と乳期の影響

乳糖率は、脂肪率とタンパク質率のような通常の泌乳曲線の形状とは異なり、乳糖濃度(%)の泌乳曲線は乳量曲線と厳密に関連する。

乳糖泌乳日数による乳の希釈の影響を受けず(乳量が増えても薄くならない)、乳量同様、脂肪率やタンパク質率とは逆の傾向、泌乳後期に最も低くなる(Ptak et al., 2012; Penasa et al., 2016; Haile-Mariam and Pryce, 2017)。

Genetic parameters for lactose and its correlation with other milk production traits and fitness traits in pasture-based production systems – Journal of Dairy Science   https://www.journalofdairyscience.org/article/S0022-0302(16)30134-5/fulltext#relatedArticles
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Effects of Genotype by Environment Interactions on Milk Yield, Energy Balance, and Protein Balance – Journal of Dairy Science       まさにこれだよね!乳糖は△、乳脂肪が□、乳蛋白が●

代謝異常のマーカーとしての乳糖

牛の血糖値エネルギーバランス乳糖濃度と正の相関、特に高泌乳品種ではその傾向が強い。Lemosquetら(2009)は、肝臓を出た血液の血糖の利用可能性乳量の間接的な主要調節因子である可能性を示唆し、血糖乳糖収量に直接関与しているとしている。

Estimation of Energy Balance at the Individual and Herd Level Using Blood and Milk Traits in High-Yielding Dairy Cows1,2 – Journal of Dairy Science  Are free glucose and glucose-6-phosphate in milk indicators of specific physiological states in the cow? – ScienceDirect Lamosquetらの文献2009 Effects of glucose, propionic acid, and nonessential amino acids on glucose metabolism and milk yield in Holstein dairy cows – Journal of Dairy Science

乳量が乳糖収量に依存していることと、血液中のグルコースを取り込んで乳糖を生成することが、乳牛の代謝上の優先事項であることを強調したい。実際、高生産牛では乳房の要求はホメオスタシスに従う。つまり、体に余計なエネルギーがなくても乳成分は変化しない。

Biology of Glucose Transport in the Mammary Gland | SpringerLink   Partitioning of Nutrients During Pregnancy and Lactation: A Review of Mechanisms Involving Homeostasis and Homeorhesis (journalofdairyscience.org)

キター!(古い)

ホメオスタシスとホメオレシス、これはまた後で全部じっくり読みましょう。

Partitioning of Nutrients During Pregnancy and Lactation: A Review of Mechanisms Involving Homeostasis and Homeorhesis (journalofdairyscience.org)

エネルギー不足になると分娩後の乳脂肪とかめちゃ上がると思うけど・・・そういうことじゃないんだよねここで言いたいのは、牛の都合は無視して乳成分は基本恒常性を保ってるってことを言いたいんだと理解。

高泌乳牛では飼料のエネルギーレベルが急激に低下したり、エネルギー需要が増加すると、エネルギーバランスがマイナスとなり、蓄積した脂肪が組織から肝臓を経由して血液に動員される。ケトーシスの指標の一つである乳中のBHBと乳糖濃度の間負の関連性(-0.17)がある。

Are free glucose and glucose-6-phosphate in milk indicators of specific physiological states in the cow? – ScienceDirect

ケトーシス泌乳初期の乳糖濃度の低下(-0.15)脂肪率の増加(0.21)脂肪対乳糖比の増加(0.15)と相関していることが明らかになり、ケトーシスが乳中の脂肪率と乳糖濃度を変化させることが報告されている。

Microsoft Word – ICAR_Metabolic disorders.docx

これらのことから乳糖、乳脂肪、乳蛋白、を使って代謝疾患の潜在的バイオマーカーとして、precision farming、個々の牛の乳成分を毎日モニタリングすることで精密酪農が可能になるかもねっと

レビュー文献にはこれ以外にも、乳糖は他の乳成分よりも遺伝率が高いので遺伝改良に使えるとか、乳量と関係があるから選抜因子として使えるとか、遺伝との関係性についても記述がありました。

乳糖については少し知識欲満たされたかな・・・・すごい、乳糖も掘れば掘るほど出てきて面白い。

全然関係ないですが、最近すごいウナギの骨せんべいが食べたくて、、、相模大野の伊勢丹の中のウナギ屋さんで揚げたウナギの骨を売っててそれがすごい好きだったんです・・・あぁ、無性にウナギの骨食べたい・・・

コメント

  1. 内田勇二 より:

    乳糖2も良いですね。 
    結論です
    プロピオン酸合成→乳糖合成がかなり重要であると思っています
    特にルーメンでのデンプンの消化率が高いもの そうコーンSの実ですね。
    これに匹敵する配合飼料のデンプン源があればいいな 夢ですかね・・・

    変わった活用 乳糖からグルコースの活用
    グルコースといえば双子とわかっている牛(妊娠鑑定にて)の分娩前のケトン体を調べ
    高い傾向にあることを確認し、双子分娩でのダメージの軽減のため 
    ルーメン プロテクト ブドウ糖
    を給与することを検討することにしましたよ。
    なんだか乳糖1を読んでいて思いつきました。
    さてケトン体は下がるかな。分娩後は牛の調子は良くなるのかな

    ありがとうございます。9月に取り組もうかな?

  2. Risa より:

    そうですね、トウモロコシの加工は色々想像すると面白いですよねぇ
    粉砕したトウモロコシを熱加工するとか
    そうするとルーメン内出の分解が速すぎて大変でしょうか
    加工も鶏豚で使われていて牛では使われていない加工を施すとか
    コストとパフォーマンス次第かと思いますが、色々想像するのは楽しいですね

    血中グルコースの量が乳糖にもダイレクトに反映されるでしょうから
    それ以外のグルコースを使う免疫や代謝にも影響するでしょうし
    バイパスグルコースは本当に面白い素材ですよね
    プロピオン酸はアシドーシスの危険ありますがバイパスグルコースにはそれがないですからいいですよね

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