引き続きADSAのまずは子牛関係を読んでいきたいと思います。
Ruminant Nutrition 3: Calf Development(続き)
1174 Effects of post-day one colostrum supplementation on growth and health of preweaning dairy heifers. 初日以降の初乳給与が離乳前の未経産牛の成長と健康に及ぼす影響
一言で言うと、増体を高めたいなら生後2,3日に半分初乳、ただし下痢による死亡を低減させたいなら薄く長く(初乳1割で生後14日齢まで)使うほうが良さそう。
●研究の目的:離乳前子牛の健康改善、またそれによる抗菌剤利用の低減を図るために、分娩初日以降の初乳代用乳給与が子牛の健康に及ぼす影響を調査した。
●研究デザイン:ホルスタイン雌子牛(n = 200; 50/1試験区)を出生当日0時と12時に初乳代用乳(205g IgG/1回)を給与、4つの試験区に分けた。
試験区は、①2日齢~49日齢まで代用乳を給与する対照区(C)、②2日齢~3日齢まで代用乳と初乳代用乳を半量ずつ、4日齢~49日齢まで代用乳を給与する(移行;T区)、③2日齢~14日齢まで代用乳100%+初乳代用乳を10%、15日齢~49日齢まで代用乳を給与する(拡張;E区)、④2日齢~3日齢まで代用乳と初乳代用乳を半量ずつ、4日齢~14日齢まで 代用乳100%+初乳代用乳を10% 、15日齢~49日齢まで代用乳のみ(移行拡張;ET区)
●結果と考察:T区はC区より試験区通期のADGが高かった(T区0.47kg,C区0.42kg,P=0.03)。EとET 区は2週齢のADGがC区より有意に高かった。(2週目のADG,E区0.45kg、ET区0.42kg、C区0.29kg,P<0.05)。下痢、呼吸器疾患および治療薬の発生率および期間は試験区間で差がなかった(P > 0.10)。T(8.2±0.01%)およびE(6.1±0.00%)の子牛はC(20.0±0.01%)と比較して死亡率が低い傾向にあった(P = 0.08)血清 IgG 値は試験区間で差はなし。
●私の思ったこと:初乳代用乳、もしくは初乳調整代用乳を販売している私としては、めっちゃ気になるところ。半分初乳で生後2,3日齢給与するか、薄くして2週間給与するか、下痢対策としてどっちがいいのかすごく気になっていました。ただ下痢発症率は差は無し。この辺は疾病をどうカウントしていたかどうか、というあたりも他報告との結果の違いが出るのだろうか?(大体初乳添加すると下痢低減するというデータが多いので)
全体の増体で見ればT区が最も高かったようで、ただ死亡率はT区(生後2-3日に初乳代用乳半分の区)のほうが、E区(2週間1割初乳代用乳を給与する)より高かった、👆よって、下痢が気になるのであれば薄く長いほうが死亡率は下げれる可能性、増体を求めるなら最初の3日間、初乳半分、が良さそう。それにしても対照区2割死んでるって死に過ぎじゃないか?ホル雌なのに。。。しかも初乳粉末も2回(IgG合計410gも)あげてるのに!
あと、たぶん最初の3日齢までの半分初乳で増体アップtっていうのは、前にマイクスティールとかが紹介いていた腸の絨毛が伸びるという、あの影響だったら面白いな。薄く長く使って死亡率低減というのは、おそらく普通に腸への継続的なIgG供給の影響が大きいんだろうか。
ちなみにヘッドスタートでおなじみ、サスカトゥーンからの報告でした。
1175 Increasing dose of prepartum rumen-protected choline: Effects of in utero exposure on Angus × Holstein beef calves. 1175 分娩前ルーメン保護コリンの投与量を増加させる:アンガス×ホルスタインの子牛に対する胎内曝露の影響
一言で言うと、妊娠後期のバイパスコリン給与は胎児に影響する、♂は大きくなり、雌雄問わず飼料効率改善される。
●研究の目的:妊娠中の牛にバイパスコリンを給与すると子牛の成長と健康にポジティブな影響を与える可能性がある。妊娠後期の RPC 投与が肉牛と乳牛の子牛の成長と健康に及ぼす影響を調査する・
●研究デザイン:ホルスタインの経産牛(アンガスの精液をつけ胎児はホルス×アンガス、胎児の性別は17頭♂、30頭♀)を3区に分け、対照区、バイパスコリン(RPC2:試作高濃縮品)を15g給与した区(RD区)、バイパスコリン(RPC2)を22gと多く給与する区(HD区)、陽性対照としてRPC1(既製品のバルケム社バイパスコリンReaShure、推奨給与量給与)も設定した。
●結果と考察:
RPC2 が増加すると、雄子牛では平均日増体量が直線的に増加し(P < 0.01)、56 日目の体重も直線的に増加する傾向があった(P = 0.07) が、雌の子牛はそうではなかった。RPC2 の増加は FE(飼料効率) を直線的に増加させる傾向があった(P = 0.1)。子宮内で RPC に曝露された子牛は、雌ではなく雄で、メチル化した全血 DNA の割合が大きかった(P = 0.04)。
RPC2 投与により雄の子牛の成長と FE が増加したが、これは DNA のメチル化の増加により調節されている可能性がある。 メチル化および成長に対する子宮内コリン曝露の性特異的影響については、さらなる調査が必要である。
●私の思ったこと:これ大事なバイパスコリンの給与日数とステージが書いてないんだけど、乾乳期間通期っていうところだろうか?♂だけ大きくなる、というのも不思議。大きく産ませたい場合、これって和牛でも有効なんだろうか?
1176 Transcriptome changes in the caecum and its associated microbial communities in young calves with early inoculation of adult rumen content. 成牛のルーメン内容物を早期に接種した若齢子牛の盲腸とそれに関連する微生物群集におけるトランスクリプトームの変化
一言で言うと、一言で言いづらい!哺乳期のルーメン液経口投与は盲腸トランスクリプトームを変える可能性がある
●研究の目的:機能するルーメンを持たずに生まれた反芻動物は、環境からルーメン微生物を獲得するとされるが、若齢子牛の腸の発達と宿主の健康に初期のルーメン微生物コロニー形成をさせることの役割について解明する:本研究では、下部消化管における初期のルーメン細菌コロニー形成に関連する分子変化を調査することを目的とした。
●研究デザイン:
子牛の初期に外因性ルーメン液を投与することに反応する盲腸のトランスクリプトーム変化を調査した。試験は 8 頭の子牛を供した。そのうち 4 頭はルーメン液の投与を受け、残りは対照として滅菌したルーメン液を投与した。投与に使用したルーメン液は、成牛1頭から採取したものである。投与は出生時から開始し、6週齢まで隔週で繰り返した。8週齢で盲腸組織を採取し、RNA-sequencingによる宿主トランスクリプトームおよび微生物メタトランススクリプトーム解析を行った。
●結果と考察:
遺伝子オントロジー解析の結果、発現量の増加した遺伝子は、免疫反応に関わる分子経路に多く含まれていた(P < 0.0001)。DE遺伝子と微生物属レベルの存在量との関連を解析した結果、盲腸の微生物属と有意な相関を示す30遺伝子が同定された。このうち、最も多くの微生物属と有意な相関を示したのは3つの遺伝子であった。SLC16A11 (32 gena)、ITIH4 (27 gena)、UBD (10 gena)であった。
●私の思ったこと:これ、盲腸の菌叢だけじゃなくて普通に増体や飼料効率はどうだったんだろう?そっちが気になる…ほかで報告しているのかなぁ…もっと調べてみよう。あと、1頭からしかルーメン液をとっていないのでそいつの菌叢がちょっと変だったらそれも受け継がれてしまうのでは。。。?今回の結果だとルーメン液を経口投与したほうがいいのかどうか、わかりませんでした。あと、毎週投与っていうのも現場レベルでは難しいので単回投与の結果を知りたい。。日本だと上松先生が黒毛和種で報告されますよね!
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