以下は、https://www.calfnotes.com/new/en/2021/05/08/calf-note-225-factors-affecting-dry-feed-intake-in-calves/ を翻訳したものです。原文著者Dr. Jim Quigley の許可を得て日本語訳を掲載しています。 引用論文の出典元は原文をご参照ください。
総括 スターター摂取量に影響するのは「日齢」と「MEgap」※
※MEgapとは分かりにくいけど、(子牛が必要なエネルギー量)から(子牛がミルクから得られるエネルギー量)を引いたもの、つまりミルクをたくさんあげているといつまでもミルクだけで子牛の必要なエネルギーが足りてしまうので、固形飼料摂取量が増えません🌟ということです。
以下ダラダラ私の考え・・・
ホルスタインの場合、哺乳初期3週間はミルクのみから栄養を取る時期なのである程度ミルクの量を多く給与したいですが、それ以降は徐々に固形飼料、つまりスターターも摂取してもらいたいもの。
哺乳プランを考える時はそのへんのバランスが重要です。
哺乳プラン=代用乳の給与体系を考えるということは、スターターをどれくらい食べてもらうか、離乳時にどのくらい大きくするか、というプラン作りでもあります。
それから(子牛が必要なエネルギー量)を計算するには、子牛を何日齢でどれくらいにしたいか、という目標が重要になります!一般的にホル雌なら離乳時に生時体重の2倍を目指す、というのが昨今のスタンダードではあります。
個人的には生後3週間は8L(粉1142g)/日代用乳給与、その後4週間は6L(857g)
→最後1週間は3Lで、56日齢離乳
→離乳時点でのスターター摂取量は1.5-2.0kg/日程度が無難と考えています。
※量を変えるのが面倒なら初期から一律6L(857g)/日、でも
それでは以下、翻訳です。
はじめに
子牛が乾燥飼料をどのように、そしてなぜ摂取するのかを理解することは、 栄養素を無駄にすることなく最適な成長を実現する給与プログラムを組む上で 非常に重要です。
Calf Note #224 では、生後約 4 ヶ月までの子牛の固形飼料摂取量を予測するのに使用できる 2 つの式について報告しました。
この予測には重要な変数がいくつかありました、今回はそれが摂取量の予測にどのように影響するかについてお話したいと思います。
研究紹介
研究内容
3 日齢~ 114 日齢までの子牛の固形飼料摂取量(DFI; スターター+粗飼料)の最もシンプルな予測式は、2021 年の Journal of Dairy Science 誌の原稿で次のように報告されています。
DFI (kg/d) = 1.4362 × e[(-4.6646 + 0.5234 × MEgap) × EXP(-0.0361 × Age)] + 0.0025 × Age × MEgap
この方程式では、DFIを予測するために必要な独立変数は2つだけでした。
この方程式は、60,000個の毎日の飼料摂取量のデータ変動の90%以上を占めたことが非常に注目に値する(つまり子牛の飼料摂取量の9割がこれで説明可能)。その2つの独立変数とは、「年齢」と「MEgap」です。 それぞれについて見てみましょう。
MEgapが飼料摂取量に与える影響
MEgapは、液体飼料(牛乳または代用乳)からの代謝可能エネルギー(ME)の摂取量と、子牛の維持・成長に必要なMEの要求量との差、のことです。
MEgap値は、ミルクの有無にかかわらず、固形飼料を多く与えられた子牛は、体重維持と成長のための必要量を満たすまで固形飼料を食べるという考えに基づいています。
動物は「エネルギーエンドポイント」を満たすために、つまりエネルギー需要を満たすために飼料を摂取するという考えは、科学的に文献からもある程度そのようなことが証明されています。
ただし、これは長期的な摂取量(数日、数週間、数ヶ月)に関するもので、1日のうちの食事の摂取量ではありません。
維持に必要な ME の量は、子牛の体重、気候(温暖または寒冷な環境では ME の必要量が増加する)、および病気(ME が増加する)によって決まります。 2001 年の Dairy NRC では、維持 ME を 体重に基づいて算出し、この値を寒冷地用に調整しています。 2001 年の発表では、暑さの調整は行われておらず、病気の状態に応じた ME 必要量の調整も試みられていません。
次に、成長に必要なMEを加えます。
これはもちろん、その動物の「目標成長」に依存します。 「目標」とする増体は、動物、品種、遺伝に基づいていますが、一般的には、ホルスタイン種の子牛の場合、1日あたり約1kgの範囲となります。 子牛が飼料を消化する能力が低い生後初期は、成長率が1kgに満たないでしょう。 しかし、ゴンペルツ曲線などの成長モデルを用いて、この必要量を合理的に予測することができます。
維持と成長に必要な ME がわかったら、牛乳または代用乳からの ME 摂取量を計算します。 そして、この値をME必要量から差し引きます。
MEmaintance + MEgain - MEmilk = 固形飼料から必要なME
これが「MEgap」値です。
日齢が固形飼料摂取量に与える影響
日齢は、子牛を対象としたこれまでの研究では、固形飼料摂取量の計算に考慮されなかった要素です。 もちろん、日齢と体重は密接に関係しており、MEgap変数では体重の影響を考慮しています。
つまり、MEgapと一緒に日齢の影響を考慮することで、日齢自体に起因する乾燥飼料摂取量の変動を説明しようとしているのです。
こう考えると、生後7日目の50kgの子牛は、生後21日目の50kgの子牛に比べて、子牛用スターターを食べる量が少なくなりそうです。
なぜでしょうか? 年長の子牛は、おそらく子牛のスターターを見たことがあり(農家が幼い頃からスターターを給与していたと仮定して!)、それを食べ物であり、エネルギー源であると認識しているからです。
スターターは美味しく、子牛は満足感を得ることができます(すなわち、エネルギー需要を満たすことができます)。 また、日齢を経た子牛は、消化器官が成熟しているため、スターターを消化する能力が高く、スターターを食べてエネルギーを得ることができるのです。 最後に、大きい日齢の子牛は農場での日常生活に慣れているため、餌を与えるという行為によって多くの子牛が何か食べるものを探すようになります。
我々は子牛の乾燥飼料摂取の開始に及ぼす「行動」の影響を軽視すべきではありません。
予測式の最後の変数は「日齢×MEgap」
予測式の最後の変数は「年齢×MEgap」でした。
この変数は、日齢とエネルギー要求量の間には相互作用があるという考えに従ったものです。 これは離乳時の日齢と子牛の大きさに関連しています。 この変数は全ての予測式で非常に重要であり、子牛が離乳できる最低日齢があることを示唆しています。
本研究では、その他の要因も飼料摂取量に影響を与えています。
例えば、気温(ME ギャップの増加)、スターターの品質(スターターの ME が低いと、同じ摂取量で子牛が ME の必要量を満たすことができない)、スターターのエネルギー(飼料の ME が低いと、子牛が ME の必要量を満たすために多く食べなければならない)などがあります。
しかし、研究全体では、これらは日齢や ME gapよりも重要ではありませんでした。疾病は確実に乾物摂取量に影響を与えるが(食欲不振、消化率の低下、ME 維持必要量の増加)、我々の方程式にこの変数を含めるにはデータが不十分でした。
まとめ
固形飼料摂取量に影響を与える生物学的メカニズムを理解することは、子牛がスターターや飼料をいつ、どれだけ食べるかを正確に予測する能力と同じくらい重要です。
最も簡単に言うと、子牛は十分に成長した後、成長のために必要なエネルギーが、与えられたミルクや代用乳から与えられるエネルギーで足りないと、固形飼料を食べるようになるということになります。
したがって、ミルクを多く与えられた子牛は、ミルクをあまり与えられていない子牛よりも、一定の日齢でスターターを食べる量が少なく、スターターを食べ始める日齢が遅くなります。
日齢に関係なく、すべての子牛はスターターを食べることを学ぶ必要があり、目の前にスターターがあるからといって、それが食べ物だと認識すると考えることはできません。
良質で口当たりの良い子牛のスターターを幼少期から与えることで、子牛が良いスタートを切り、離乳の準備をすることができます。 スターターの摂取を促進するためには、給餌管理も重要であり、スターターの品質と嗜好性、スターターの物理的形状、新鮮さ、水の有無、給餌の一貫性などの要素が含まれます。
引用元
Quigley, J. D., T. S. Dennis, F. X. Suarez-Mena, C. E. Chapman, T. M. Hill, and K. M. Aragon. 2021. Models to predict dry feed intake in Holstein calves to 4 months of age. J. Dairy Sci. https://doi.org/10.3168/jds.2020-19581.
翻訳ここまで
コメント
興味深い文献ですね。さて和牛の親付けの場合はどのように応用すべきか?1か月半は母親からミルクが十分給与されても実際6~8リットル飲めるのかどうか?不明ですね。そうするとスタータをどれだけ食べるか?(当然、品質、嗜好性、栄養価等の)戦略と固形飼料に向かわせるか?の行動。それと元気に食べると子牛の健康のミックスアップになるのかと思います。
子牛の側
生まれる子牛がまず健常であること
生まれた子牛の環境
より嗜好性のいいスタータ
それを素早く覚え確実に食べだすこと
スタータの栄養価、消化性を考慮した物理性、
母親の側
母親がより多く(和牛であっても)ミルクを出す栄養管理(今の配合の栄養価で大丈夫?)
粗飼料の栄養価(消化率も考慮したトータルのもの)
等々
酪農であっても肉牛であってもスタートの子牛の栄養が重要ですね。和牛の母牛は1か月半はスペシャルな濃厚飼料と良質な粗飼料で頑張るようにコンサルしていきますよ。
その時の行動はまず早めにスタータを食べられる環境作りですね
貴重な情報ありがとうございます。
今後もよろしくお願いします。
内田先生
コメントありがとうございます!
子牛の管理のスタートは乾乳から、これは間違いないですね。
そうですね、和牛でもおそらく子牛のスターター摂取量は、日齢とMEGap(必要なエネルギーからミルクのエネルギーを引いたもの)になりそうです。
そうすると、先生のおっしゃるようなスターターをどう食わすか、どんなスターターを食わすか、粗飼料は?、水は?、といったスターターを食える環境は十分整っているか?という部分が重要なのかなと想像します。
和牛子牛でも初期はスターターだけあげている人が多い気がしますが、少しの粗飼料を混ぜることでもっと採食量が上がるのではないかなぁと思ったり。
親付け子牛の場合は、子牛への配合、水、粗飼料へのアクセスが不十分なこともあったり。
色々想像すると面白いですね、いつもありがとうございます