ADSA2022 -vol6-

さて、引き続きADSA2022の内容ですが、たまには栄養ではなく、牧場での働き手の話。

ADSA Southern Branch Symposium: On-Farm Labor


1402 Skills required for personnel in charge of robotic milking systems. ロボット搾乳システム担当者に必要なスキル F. Soriano*, APN Dairy, LLC.

・ロボット搾乳では引き続きアメリカでも人気が高まっている

・労働力が短縮されても効率的な管理に必要なスキルは高くなる

・そのため高いスキルを持ち効率的専門的な人材雇用がより重要

・AMS牛舎で働く人は、乳牛と一緒に働くのが好きで牛を扱うスキルが非常に高いことが重要

・機械的能力、スキルも重要で、テクノロジーが好きで牛群管理ソフトウエアを使いこなす能力も必要

・牛群衛生に関する知識と経験も必要

・優れたコミュニケーション能力、組織力も重要、マネージャーや酪農事業にかかわる技術者・コンサルタントとのコミュニケーションも必須のため

・ロボット作業とメンテナンスの長期的なスケジュールの立案維持ができること

このような酪農市場のセグメントに合わせた学術的なプログラムの開発は、技術的に進歩した新しい酪農経営に大きな利益をもたらすことでしょう。

(上田コメント)牛が大好きでコミュ力があって機械も好きでITもできて牛群衛生にも詳しくて、長期的スケジュールの管理もできて。。。ってこれロボット搾乳じゃなくても、そんな人引く手あまたじゃね?!!?!?!?


1403 Transitioning to robots: Our experience with labor. M. Rodgers*, Hillcrest Farms Inc., Dearing, GA.

Hillcrest Farms はジョージア州で最初のロボット酪農場で、搾乳ロボット運用を30ヶ月間続けた結果、ロボット搾乳への移行で重要だと思われる点を、本シンポジウムで発表・議論する。

(1) 移行アドバイザリーチームを作る。誰を含めるか?
(2) スタッフが果たすべき新しい役割と、排除されるべき役割を明確にする。
(3)労働のパラダイムシフトについて、職員と率直に話し合い、退職金を受け取るための目標を設定する。
(4) パーラーからロボットに移行する週は、農場外から追加スタッフを活用する。誰を入れる必要があるのか?

(5) “Less-labor over time “という動くゴールポストについて議論してください。 従業員が少なくなると、チームワークがより不可欠になります。データとテクノロジーへの依存度が高まるため、スキルセットと職務の変化が必要。スキルセットと職務の変化が必要。

(6) パーラー酪農からロボット搾乳への転換による、より質の高いスタッフの確保と定着。ロボット、カメラシステム、最先端技術やソフトウェアをどのように活用し、より柔軟な労働環境を実現するか。

(7)当地域のロボット施設の比較。牛のフローパターンとロボットの数に対して必要な従業員の数。

(8)これからどうするか?アグリツーリズム、サイバースクールと技術トレーニング、地元大学との研究プロジェクト。

(9) プロセス全体を通して、私たちが期待していたことと、それが現実と比較してどうだったのか。
(10) 私たちの牛の主要業績評価指標にどのような変化が見られたか?具体的には、繁殖、行動、生産、運動性、SCC、乳房炎検出、代謝の問題など。

(上田コメント)シンポジウム、なのでこれをもとにディスカッションの場があったのかもですね。実際搾乳ロボットがこれだけ普及してきていますから、導入牧場で実際どうであったか、今後やる方へのアドバイス、など、もっともっと情報が体系的に整理されるといいですよね。


1404 Labor impacts economics of robotic milking. J. Salfer*2 and M. Endres1, 1 University of Minnesota, St. Paul, MN, 2 University of Minnesota, St. Cloud, MN.

・ロボット搾乳システム(RMS)は、比較的速いペースで酪農家に採用されている。その理由はライフスタイルの改善と労働力が大きな要因。
・USDAによると畜産労働者に支払われる賃金は2020年、2021年ともに6%上昇し、平均15.45ドル/時間。

・スプレッドシートの部分予算シミュレーションモデルを用いて、RMSと従来の搾乳システムの経済性を時給16ドルで比較した。

・ミュレーションの結果、240頭のRMSは8パーラーダブルシステムと比較して、年間純収益が高いことがわかった。

・牛 1 頭あたりの日産量が 1 ポンド変わるごとに、正味の年間インパクトは 7362 ドルも変わった。

・1,500 頭の酪農場で、年間賃金が 3% 上昇し、1 日当たりの牛乳が 0.9kg 減少した場合、パーラーシステムは RMS よりも収益性が高い($106,502)。

・1,500 頭の牛群の RMS はパーラーシステムよりも収益性が低く、16 ドル/時間で、3% の賃金上昇率だったため、2 つのシステムの年間純影響が同程度になる損益分岐賃金は21.08ドル/時間。

・RMSで牛1頭あたりの乳量が増えた場合、利益比較にどのような影響が出るかを検討すると牛乳が 1.0kg/d 多ければ、どの賃金上昇率でも RMS の方が収益性が高くなる。

・システム間の乳量と労働力の仮定が収益性予測に大きく影響する。

(上田コメント)アメリカの畜産関係の平均時給が16ドル近く。。。やはり1000頭以上では、1ロボットあたり60頭というキャパが制限要因になって、大頭数ではパーラーをガンガン使う方がコスト的にはメリットありそうです。逆に240頭の結果を見ると、あとはいかに搾乳ロボットを入れて労働力を下げて乳量を上げれるかが、収益性へのカギになるのでしょうね。そういう意味では、搾乳ロボット牛舎をワンオペ出来るようにして労働生産性を上げるという4dBARNの思想は初期投資額が増えても、長期的な目で見れば、コスパが良いのではと思います。搾乳ロボット農場の実際の収支について、農業経済学の学生さんの卒論とかで是非調査してもらいたいものです。


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