Ruminant Nutrition 2: Protein and Amino Acids
引き続き、2023年アメリカ酪農学会、Abstracts_BOOK_2023.pdf (adsa.org)
次はタンパクとアミノ酸について読んでみましょう。
やはりバイパスアミノ酸とかいうと、国内企業では味の素の絡む発表が多く、バイパスヒスチジン、バイパスアルギニンの報告もありました。
私は、餌の中身でいうと、デンプンやNDF、脂肪のほうが栄養学的には色々加工の工夫や現場での給与のアレンジが出来て面白いと思ってしまいますが、バイパスアミノ酸・バイパス蛋白源というのも必要な場面もあるし、どうせ使うならめちゃ安くてなんだかわかんない品質のものよりかは多少高くてもきっちりデータを取って(とくにバイパス関連は!)、きちんとバイパスしていること、その製品の結果を複数の研究機関で出しているもの、なら使う価値あるのではと思っています。
今回一番面白かったのは一番最後に載せたバイパスアルギニンで初乳量が増えるというものかな~
・タイトル:198 Nutrient dynamics of dairy cattle milk protein concentration under the first limiting theory: A meta-analytical approach.
T.Danese*1, M. Van Amburgh2, P. A. LaPierre2, F. Righi1, and A. Fosko-los3, 1Department of Veterinary Sciences, Parma University, Parma,Italy, 2Department of Animal Science, Cornell University, Ithaca,NY, 3Department of Animal Science, University of Thessaly, Larissa,Greece
一言で言うと、 乳蛋白への影響、MEとMP制限区では最も栄養するのは脂肪、MP制限区ではNDF、ME制限区ではデンプン
●研究の目的:代謝エネルギーまたはタンパク質(MEおよびMP)が異なる飼料を給与した乳牛において、飼料特性と乳粗タンパク質濃度(mCP)の関係を調査する
●研究デザイン:2001年から2021年までの関連研究を加えて更新した結果、 108の文献から 291の栄養濃度の異なる試験区が得られた。mCPと各飼料成分( CP、RUP、RDP、NDF、ADF、EE、糖、デンプン )(%DM)の相関を評価した。
●結果と考察:
分析は3つのデータセットについて行われた:(A)全試験区、(B)MP制限区、(C)ME制限区
・すべての飼料が含まれる場合、EE(1st)、デンプン(2nd)および ADF(3rd) がそれぞれ最大の変動を説明する主要栄養素であった。
・MP制限飼料では、NDF(1st)、EE(2nd)およびRDP(3rd)が最も大きな変動を説明する飼料因子
・ME制限飼料には、デンプン(1st)、EE(2nd)およびADF(3nd)が最も大きな変動を説明する飼料因子

最初に制限される栄養素によって、異なる飼料特性が mCP に影響していることを示唆している。
●私が思ったこと・・
乳蛋白濃度について、MPが足りないときにはNDFの影響が大きくて、MEが足りないときにはデンプンの影響が大きい、全体で見ると脂肪の影響が大きい、脂肪の影響が大きいって意外だなぁ・・・NDFやデンプンなどは菌体蛋白の合成にも当然影響大きそうだなという感じはするのですが。
・タイトル:2199 Lysine, methionine, and histidine deficiency affect milk protein synthesis and mRNA expression of transcription factorsby primary bovine mammary epithelial cells. B. Li*1, D. Innes1
, M.Madison1, J. Kim1, C. Rodriguez1, J. Doelman1,2, and J. Cant1, 1 University of Guelph, Guelph, Ontario, Canada, 2 Trouw Nutrition, Putten,the Netherlands.
一言で言うと、 EAAが単独で欠乏すると乳腺のタンパク質合成、細胞増殖、ER形成が阻害されるが、乳脂肪合成率には影響しない
●研究の目的:必須アミノ酸(EAA)は、転写および翻訳の活性化、細胞増殖および小胞体(ER)の生合成の刺激という組み合わせを通じて、乳タンパク質合成に影響を及ぼす可能性がある。
今回の試験の目的は、in vitroで単一のEAAが欠乏した場合に、タンパク質、脂肪、DNA、ERの合成速度がどの程度変化するかを調べることと、関連すると仮定される転写因子のmRNA発現を測定することであった。
●研究デザイン:
乳腺上皮細胞を3頭の乳牛の乳腺から採取し、DMEM/F12と170培地を等量混合した培地で培養した。細胞は5日間分化させた後、全てのEAAを通常の生理的濃度で含むコントロール培地(CTL)、または20μM Lys(LK)、5μM Met(LM)、10μM His(LH)をそれぞれCTL濃度の25%添加した培地で60時間3反復、培養した。
EasyTag Express 35S、14C-acetate、3H-thymidineは、それぞれタンパク質、脂肪、DNA合成速度を推定するために、細胞収穫の2時間前に培地に1mCi/mL添加した。培養細胞はqRT-PCRとER形成解析のために回収した。
●結果と考察:タンパク質合成率(P < 0.01)、DNA合成率(P < 0.01)およびER形成率(P < 0.05)は、CTLと比較して全ての処理で有意に低かった。脂肪合成率は処理による影響を受けなかった(P = 0.22)。
・EAAが単独で欠乏すると乳腺のタンパク質合成、細胞増殖、ER形成が阻害されるが、乳脂肪合成率には影響しないことを示している。
・転写因子ATF6およびJUNはLysの欠乏により発現が上昇し、FOSはLysおよびMetにより発現が低下した。
●私が思ったこと・・必須アミノ酸が欠乏しても乳脂肪合成には影響しないということでしたが、ここで試験したのはリジン、メチオニン、ヒスチジンだけだからほかのアミノ酸が影響する可能性はあるよね!NASEMでは確かいくつかのアミノ酸が乳脂肪合成と関連があると書いてあった気がするけど‥
・タイトル 200 Source and frequency of rumen-protected protein supplementation affects mammary gland amino acid metabolism. K.Nichols*1, N. Wever1, C. Cirot2, M. Rolland2, and J. Dijkstra1, 1 Animal
Nutrition Group, Wageningen University and Research, Wageningen,the Netherlands, 2 Ajinomoto Animal Nutrition Europe, Paris, France
一言で言うと、
●研究の目的:乳腺の代謝を、タンパク質源および変動する AA 補給に応じて調査した。
●研究デザイン:
・28頭のホルスタイン・フリージアン牛(DIM 93 ± 27)をDIMと産歴で群分け
・タイストールで基本飼料(CP 15.5%;MPおよびNEL要求量の95%および100%に調整)を7日間の馴致期間中の各群の平均自由摂取量に従って一定量16日間給与
・牛群ごとに、基本飼料(CON)または基本飼料に混合した 3 種類のルーメン保護サプリメント(RP)のいずれかに無作為に割当て
1)RP His(Ajinomoto Co, Japan)、Lys(AjiPro-L; Ajinomoto Health & Nutrition, USA)、Met(Smartamine; Adisseo, France)の 384g 混合飼料を毎日給与(RPAA)
2)RP His、Lys、Met の 768g 混合飼料を隔日給与(OS–RPAA)
3)RP 大豆粕と RP 菜種粕(MervoBest; Agrifirm, Netherlands)の 315g 混合飼料を毎日給与(RPSR)
・乳腺代謝は、試験期間最後の 2 日間の午前と午後の搾乳の間の 5 時点で採取した動脈(尾動脈)および静脈(腹皮下静脈)の血液サンプルに基づいて推定した。
●結果と考察:
・His、Lys、Met(HLM)の動脈内総濃度は、CONおよびRPSRと比較してRPAAで増加(P≦0.01)。
・OS-RPAAの場合、給与しなかった日のHLMの動脈内濃度は給与した日に比べて高く(P < 0.01)、HLMの正味取り込み量および乳汁分泌量に対する取り込み量の比率は高くなる傾向(P < 0.10)。乳腺血漿流量は影響を受けなかった。
・予備的な結果から、乳腺はHis、Lys、Metの24時間変動供給に対して、非供給日中にこれらの単離アミドの隔離を増加させることで反応したことが示唆された。
●私が思ったこと・・隔日給与で給与していない日でも血中の値は増えるっていうのはどういう仕組み何でしょうか?隔日でもたくさんバイパスアミノ酸給与されていれば、デフォルトで血中に吸収されたアミノ酸の振り分けが、血液に振り分けられる量が増えるって感じなのでしょうか。バイパスヒスチジンっていうのもだいぶもうデフォルトで試験に使われているんですねぇ
・タイトル 202 Ile, Leu, and Met effect on milk production is independent of energy source. M. Killerby*1, G. M. de Souza2, K. Ruh1, V.Pszczolkowski1, L. A. C. Ribeiro1, E. Cohan1, M. A. C. Danes1, and S.I. Arriola Apelo1, 1 Animal and Dairy Science, University of Wisconsin–Madison, Madison, WI, 2 Department of Animal Science, Federal University of Lavras, Lavras, MG, Brazil.
一言で言うと、 第四胃へのグルコース注入は乳量増加、アミノ酸注入(ロイシン、イソロイシン、メチオニン)は乳脂肪増加
●研究の目的:
本研究の目的は、2 種類のエネルギー源(ES)に加えて AA を補給した場合の泌乳牛の反応を比較することであった。
●研究デザイン:
分娩日により 2 群に分けられた 16 頭のホルスタイン種牛(70 ± 26 DIM)が、4 × 4 ラテン正方形反復試験に組み入れられ、試験は 21 日間で実施された。
2因子は、
・ES:等エネルギー量(2.86Mcal/d)のグルコース(GLU)または緩衝酢酸(ACE)
・AAレベル(AAL):ILM(12g Ile、50g Leu、20g Met)または対照として水(CON)
搾乳時を除き、飼料は連続的に4胃内に注入した。牛はタイストールに入れられ、1 日 2 回搾乳され、エネルギー要求量の 96%、代謝タンパク 質要求量の 84%を満たすように調製された飼料が与えられた。
体重は毎週記録し、DMI と乳量は毎日記録した。乳検体は各期間の 15~19 日目に採取し、17~19 日目の午前と午後の搾乳の間に 10 回の血液を、1 時間ごとに採取した。
●結果と考察:
・ACEと比較して、GLUはDMI(+0.8 kg/d;P=0.05)、血漿グルコース(+2.4 mg/ dL;P<0.01)およびインスリン(+0.123 μg/L;P<0.01)を増加させた。
・日平均増体量は GLU 群(254g/d)と ACE 群(53.7g/d;P = 0.09)で多い傾向。
・乳量は GLU 群で多く(+1.7kg/d;P < 0.01)、ILM 群で減少する傾向(P = 0.06)。
・タンパク質収量は GLU で増加したが(+71 g/d、P < 0.01)、脂肪収量は ACE で増加(+110 g/d、P < 0.01)。
・脂肪収量はILMで増加する傾向があり(+42 g/d、P = 0.05)、%は増加(P < 0.01)。
・窒素効率は GLU の方が ACE よりも高い傾向(27.2% 対 26.3%;P = 0.09)。
・第四胃へのグルコース注入は乳量、タンパク質収量および窒素効率を改善し、酢酸および AA はそれぞれ独立して脂肪収量を増加させた。
●私が思ったこと・・グルコース効率イイんだな、あとはなんでアミノ酸を四胃に入れると乳量低くなるのか。エネルギーが乳脂肪合成のほうに傾くから??ロイシンとかイソロイシンって乳脂肪増のほうに関連するアミノ酸だっけ…(後でNASEM見ておく)
・タイトル 2205 Effects of supplementing rumen-protected arginine (RPA) on production performance of transition cows. B. S. Simoes*1 , R. Lobo1 , T. Adeoti1 , M. N. Marinho1 , M. Perdomo1 , L. Sekito1 , F. Saputra1 , M. Bari1 , U. Arshad1 , A. Husnain1 , Y. Sugimoto2 , C. Nelson1 , and J. E. P. Santos1 , 1 University of Florida, Gainesville, FL, 2 Ajinomoto Co., Inc., Tokyo, Japan.
一言で言うと、移行期のバイパスアルギニン給与て初乳量増える
●研究の目的:目的は、代謝性アルギニン(Arg)を RPA として 30 g/日、妊娠 250 日から泌乳 21 日(DIM)まで給与した場合の乳牛の泌乳量に及ぼす影響を検討すること
●研究デザイン:
未経産牛、経産牛、を対象に、産歴ごとに群を分けて
1)コントロール(CON):熱処理大豆粕からの代謝性蛋白質(MP)30 g/d
2)RPA、代謝性 Arg(味の素株式会社、日本)30 g/dに割り当てた。
●結果と考察:

・RPA を給与した牛は、CON 牛よりも初乳を 2.5kg 多く産生し、IgG を 220g 多く分泌した(526 対 746 ± 93g)。
・乾物(DM)の摂取量は最初の 84 DIM では差がなかったが、RPA を給与すると最初の 21 DIM で乳中の尿素 N が増加した(11.0 対 12.0 ± 0.3 mg/dL)、
・BW および BCS に影響を及ぼすことなく、最初の 21 DIM および 22~84 DIM の乳中の ECM および全固形分を増加させた。
・ECM収量に対するキャリーオーバー効果は経産牛でのみ観察された。
・RPA の補給は乳牛の生産成績に有益であり、ECM の収量増加は給与期間を超えて持続した。
●私が思ったこと・・初乳量が増えるのは面白い!っというのと、MP区の結果はどうだったんだ?!あと、これ和牛でやるならどうなんだろうというのも思った、アルギニンって分娩前の母牛に給与すると子牛の胸腺形成に影響するとかいうし。和牛で乾乳期に給与して子牛の胸腺も強くなる、初乳も多くなる、って言ったら使う価値あるんじゃない?!
👇間違いがあり、修正しています。以前読まれた方申し訳ありません。
※以前①対照区 ②MP増給区 ③バイパスアルギニン給与区と書いていましたが、①と②が同じで対照区としてMPを増やした区 vs ②バイパスアルギニン区という試験設定でした。
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