夏だ!海だ!乳脂肪だ!
というくらい、夏=乳脂肪低下、ってデフォルトですね・・・エサ代はどんどん上がっていくばかりなのに夏に向けて下がる乳脂肪・・つらい・・
今年は乳脂肪を落としたくない!
そんなあなたに・・・
夏に向けて乳脂肪についておさらいしていきましょう・・
4stateDairyNutritionManagementConference2020の Dr.Kevin Harvatineのスライドより。
基本はこれが全部。非栄養的なファクターについては、特に遺伝からの影響は大きいと思うけれど、個々の状況により違うかと思うのであまりコメントできませんが、栄養的ファクターを見ていきましょう。
http://fourstatedairy.org/proceedings/2020/20_4state_proceedings.pdf

1.アシドーシス対策(もうなにもかもこれで増悪する)
まずはこれ。これがベースになっている理由としては、下記「乳脂肪合成」のように乳脂肪はルーメンで作られる部分由来が多いのでこれが低下すると影響大きい。
またそれだけじゃなくて、上記にも書いてある「微生物水素添加誘発性乳脂肪低下」(不飽和脂肪酸が多すぎるときにルーメン内で微生物が変な不飽和脂肪酸が出来ちゃってそれが乳腺にいくと乳脂肪低下を起こす)もアシドーシスで増悪することが分かっています。
じゃアシドーシス対策って何があるの?っていうと
・超絶基本的なとこだと穀類:スターチレベルを高めすぎない
・粗飼料比率を高める
・重曹添加
・重曹ブロック設置
・フリーストールならナガモノ(餌槽のはしっこに1ブロックくらいどかっと長い輸入乾草を切らずに、出来ればチモシーがいいけど)を置いて
あたりがすぐ出来る対策かな・・・
・あとは特に分離給与なら給餌回数を増やす(特につなぎだと)
・TMRだったら粗飼料の切断長もパーティクルセパレーターやゼットボックスで調べているのはいいですね、もし切断長が短いようならちょっとミキシング時間とか調整してみてもいいですよね。
ただ選び食いには注意。選び食いするようなら加水必要と思います。夏は最大60%くらいまで水増やしてもいいのでは。
他なにかあるかなぁ・・・
TMRの内容がよっぽど突飛でなければ、まずとにかくルーメン(発酵)を安定させること、で、それには常に安定的に同じ内容の飼料が食べたいときに食べたいだけ摂取できること、が大事だと思っています。
2,不飽和脂肪酸の供給量を確認
1日あたりの不飽和脂肪酸の量が高いと危険・・・ビール粕とか典型的な感じよね・・・
加熱処理大豆や綿実みたいな殻に覆われているものはRUFALとして1日の供給量が推奨の500gを超えていてもルーメン内でスローリリースなので、そこまで問題ないとは思いますが。
RUFALが云々って話は前にも書いてるので割愛
3,乳脂肪の基質を増やす
・アシドーシス対策と被るけど、粗飼料を増やすというのは酢酸を増やすという意味でこの基質を増やすというところにも寄与しますよね、でも最近ってもうこれだけじゃどうにも対応できない気がしていて・・・・草も高いんだもん😢。。。
・パルミチン酸の出番ですね。
そもそもパルミチン酸を給与すると乳脂肪が増えるのは、どうも給与され吸収されたパルミチン酸は乳中への見かけの移行率は15-20%あるようで、それは選択的に乳腺がパルミチン酸を特に!取り込む性質があるから、のようです。
こちら、十二指腸への各脂肪酸注入時の牛の乳腺での取り込みについて調べた論文。
結論は、乳牛の乳腺によるFAの取り込み、そこでの脂肪酸合成および脱飽和は、16:0、18:0およびcis-18:1(n-9)の動脈内濃度によって影響を受ける。
十二指腸にパルミチン酸を注入すると血中のパルミチン酸濃度は上がって、乳腺に取り込まれる量も非パルミチン酸給与区と比較すると47%上がった(爆上がりだな・・・)ということです
https://academic.oup.com/jn/article/128/9/1525/4722489#112033928
おさらい 乳脂肪に影響する要因
最近だと、糖を増やすと酪酸が増えるっという報告もあって一部デンプンを糖(糖蜜とかね、糖蜜パウダーとか、パイナップルとかね)にふることで夏のアシドーシス予防→乳脂肪低下予防になるのではと考えています
そのほか、乳脂肪に影響する要因
飼料 | 粗飼料と濃厚飼料の比率 粗飼料の種類 繊維の長さ、品質 飼料中の脂肪、特に不飽和脂肪酸含量 飼料中のデンプン、またそのルーメン内分解性 |
牛 | 品種、泌乳ステージ、乳量 |
管理 | 飼料給与回数、餌寄せ回数、給与量(残餌何%設定で給与しているか)、密度 |
環境 | 風速、THI、気温、湿度、換気 |
最後に
http://fourstatedairy.org/proceedings/2020/20_4state_proceedings.pdf
Kevin Harvatine, Ph.D. 「Maximizing Milk Fat Yield」
上記のP127でDr.Harvatineが「まずはこれを見直そ★各農場で反応は違うからトライ&エラーやで」と言っている項目について以下まるっと記載します ※()はわたしの追加コメント
1,不飽和脂肪酸含量 特にC18:2!(日本では副産物とか使ってる場合は特に注意) 脂肪酸カルシウムも全くルーメン内に影響しないわけではない
2,飼料の発酵性 基本はデンプンを減らして繊維を増やして、でも乳量が減る事もあるので注意して・・・・糖質が有効な場合も。粗飼料由来のNDF、有効繊維を増やして
3,ルーメン調整剤 モネンシン(日本じゃ無理だけど)、Na&KでDCADを上げる、HMTBa、酵母などの添加剤
4,給餌マネジメント 回数、給餌タイミング、選び食い などを見て必要ならば変更してみよう
5,飽和脂肪酸(パルミチン酸)の添加
おわり
コメント
わかりやすく解説して頂きありがとうございます。北海道で出来ること?すべてかな。ある牧場の話・・・夏場に一番いい出来と思われる1番サイレージを取ってあるのです。刈り取りもいい時期で、雨に当たらず、自信のあるサイレージです。何とかこれを使わずにここまで持たせました。今年は大丈夫な気がします。・・・備えあれば憂いなしですかね
現場での対応まで・・
Twitterから飛んで来ました!
とても勉強になります!10年以上エサ屋にいましたが、再度勉強するのにはもってこいですね(^^)
あと、ユーモアがあるのでとても好きです♫また読ませて下さいねー!
内田先生
コメントありがとうございます!!
先生はTMRへの重曹添加はどう思いますか?
私は夏場は盲目的に1頭100g-200g添加してもらうことが多かったのですが
重曹ブロックとどっちがコスパ良いんだろうと最近考えます。。。
とっておきの粗飼料を夏に確保しておく、自給飼料地帯ならではの隠し玉ですね!そしてそれが出来たら凄く良さそう・・・!!!
いいと思いますよ。私は夏場だけは使います。フリーチョイスは牛によっては覚える牛、覚えない牛いますので・・よくある話 おい重曹置いたけどなめないぞ・・まだ1週間でしょ。牛は1か月ぐらいで覚える牛もいますから あとこんな話も・・A群とB群 重曹のフリーチョイスしたよB群のほうがなくなるの早いんだ。濃度はA群が高いのだが・・あら?あのB群の牛顔を真白くして重曹なめてたな。半分遊びは行っているな、そんな牛多いのでは? 私はTMR投入派ですよ、そのほうが人がコントロールできますからね
内田先生
ありがとうございます!確かに遊んじゃう子もいますよね笑
なるほど、先生はTMR投入派ですか、参考になります。
たしかに確実に給与することができますし、量もコントロールできますね!
今村さん!
コメントありがとうございます。
餌屋の先輩に読んでいただくのは非常に恐縮ですが、
そう言っていただけて嬉しいです!
日本でKを添加する方法ってありますかー?