栄養代謝と飼料摂取量の制御について…
ミシガン州立大学の研究です;Symposium review: Fueling appetite: Nutrient metabolism and the control of feed intake – Journal of Dairy Science

今日は少し小難しい…お許しを~
超簡単に言うと、採食をコントロールする要素として、腸管のキャパとか、代謝の要求量、だとかが考えられていたけど、これまでにない要素として「HOT理論と呼ばれる」もの:が有力
→肝臓で、代謝物をセンシング、それが末梢神経からシグナル→飼料摂取量に影響する可能性。牛では、それが、「プロピオン酸なのでは」というハナシ。
結論から: 飼料摂取量は脳の摂食中枢で統合された複数のシグナルによって制御されており、肝臓の酸化に反応して摂食行動が変化することから、肝臓は長期および短期の制御を統合したエネルギー状態の主要なセンサーであることが示唆された。
HOT理論は、反芻動物の肝臓における燃料の代謝が、どのようにFI(飼料摂取量)と摂食行動を制御するかを説明する生理学的なメカニズムである。
Symposium review: Fueling appetite: Nutrient metabolism and the control of feed intake – Journal of Dairy Science
HOT理論って何て読むの?ホット理論でいいんですかね?
過去:過去1世紀にわたって開発された概念モデル:健康な動物の飼料摂取量(FI)に対する2つの重要な制約を腸管容量と代謝要求量と説明 → しかしこれでは「異なる燃料(飼料)に対するエネルギー摂取反応の差を説明できない」
今:、栄養の利用可能性を感知し、摂食行動を制御する信号を統合する視床下部中枢にフィードバックするメカニズムに焦点が当たっている。
迷走神経切断術によって特定の栄養素に対するFI反応が消失することは、末梢組織が栄養素の感知に役割を果たしていることを示唆。これらの知見と、代謝における肝臓の中心的な役割から、肝臓酸化説(HOT)が生まれた。
HOTによれば、肝臓のエネルギーチャージは、食事摂取量の変化を誘発し、結果として全身のエネルギーバランスに影響を与える制御変数である。
Symposium review: Fueling appetite: Nutrient metabolism and the control of feed intake – Journal of Dairy Science
ちょっと難しい感じ…まずは導入部分を少しかいつまんでみます。
・1784年にAntoine-Laurent de Lavoiserが行った研究を基に、動物の熱消費量と酸素消費量を推定することでエネルギー必要量が決定されるようになった。
・化学や代謝に関する理解が深まるにつれ、呼吸室やボムカロリメトリーの使用により、様々な状況下(維持期、泌乳期、妊娠期など)における動物のエネルギー要求量や動物に与える飼料のエネルギー含有量を推定できるようになった。
・しかし、システムに入力するエネルギー量とその後のシステムのエネルギー出力は計算できても、そのボックス内で起こっているメカニズム(すなわち、飼料摂取量、FIに関連する生理・代謝制御)は解明されていないという「ブラックボックス」状態。
・摂食行動はエネルギー以外の栄養素の制約に影響される可能性がある。
・ルーメンでのデンプン発酵の主要産物はVFAであるプロピオン酸→他のVFAと比べて食欲を抑える作用。プロピオン酸は主に肝臓で吸収・利用→肝臓における栄養素の代謝が摂食行動に何らかの影響。
・中枢神経系と末梢神経系(脳と肝臓など)の間でクロストークが起こり摂食行動に影響を与えるエネルギー状態への反応とそれに続く満腹・空腹シグナル伝達の調整を担っている可能性。
Symposium review: Fueling appetite: Nutrient metabolism and the control of feed intake – Journal of Dairy Science
エネルギー以外の栄養素、というのは何かというと具体的にはこんな感じのよう。
・ 総エネルギー消化率が同じで、デンプン発酵性が2つの異なる飼料(乾燥トウモロコシ粉砕 vs ハイモイスチャーコーン)を与えたところ、発酵性の高いデンプン源を与えた乳牛のDMIとME摂取量が低下。
Diet starch concentration and starch fermentability affect energy intake and energy balance of cows in the early postpartum period – Journal of Dairy Science
発酵性高いほうがDMI抑制ってなんとなく腑に落ちますがそのメカニズムは。。。
中枢と末梢の制御機構
・1.採食行動の最終的な制御は視床下部:視床下部が代謝物を直接感知して摂食行動を変化させる可能性があるという証拠に加え、循環する栄養素による食欲への負のフィードバックには末梢からの入力が必要であるという証拠も存在。
・2.栄養素を介した満腹感シグナルのメカニズムのひとつに腸管ペプチド:腸管上皮層のL細胞から分泌されるホルモンで、特定の栄養素を感知し、吸収可能であることを体の他の部位に知らせる。腸ペプチドの少なくとも一部の効果を媒介することに加え、迷走神経は内臓の栄養素を直接感知することによって引き起こされる信号も伝達している可能性。
・3.門脈輸送は、腸のほとんどの内分泌活動を担うL細胞を含む腸の感知を迂回→肝門脈の壁内に埋め込まれた化学感覚ニューロンや肝臓自体による感知を含む仮説が導き出された。
Symposium review: Fueling appetite: Nutrient metabolism and the control of feed intake – Journal of Dairy Science
ふむふむ、中枢は視床下部だけどそれ以外に末端神経で腸や肝臓でのセンシング→中枢へのフィードバックが働いている可能性を示唆ということですね。
肝酸化理論(HOT理論)
1.肝臓は代謝と栄養素や燃料の感知に中心的な役割、飼料摂取量に影響を与える長期的および短期的なメカニズムを統合する主要な感覚器官(Allen, 2020)。
2.実験動物で行われた研究によると、摂食行動の制御は肝臓のエネルギーチャージに関連しており、燃料の酸化に由来する肝臓のエネルギー状態に関連する共通のシグナルによって、他の代謝抑制機構と相乗的に統合されていることが示唆される。
3.そのため、肝臓のエネルギー状態と感知は、脳への満腹または空腹シグナルの引き金となるメカニズムとして示唆されている(Friedman et al.、1999)。
4.裏付けとして、乳牛にグルコースを注入してもエネルギー摂取量が減少しないことが多数の研究で示されている(Dowden and Jacobson, 1960; Clark et al., 1977; Chelikani et al., 2004)。
5.プロピオン酸とグリセロールはどちらもエネルギー含有量が同程度の3炭素グルコース前駆体であるが、グリセロールと比較してプロピオン酸は飼料摂取量を減少させた(Gualdrón-Duarte and Allen, 2017)。
6.これは、プロピオン酸が偏性アナプロティックな(補充的な)代謝物であるためと思われる。一方、グリセロールはアセチルCoAの酸化を刺激することなく、細胞質で糖新生経路に入ることができる。
7.肝酸化理論(HOT)は、燃料の酸化により肝エネルギー量が増加すると、肝迷走神経求心性神経の発火率が低下し、満腹のシグナルを発する。一方、食後にエネルギー量が減少すると発火率が上昇し、飢餓と食事の開始を引き起こすと提唱する(Allen et al.、2009)。
8.摂取を制御する肝迷走神経求心性神経の発火率の変化には、肝エネルギーチャージが関与していると思われるが、シグナル伝達の正確なメカニズムは十分に解明されていない(Allen and Piantoni, 2013)。

エネルギーの話になるとTCA回路の話は切っても切れないですよね…TCAサイクルってなんだっけ。。。忘れた。。。って思って、ちょっとググったらなんか小難しかった。もう、サルでもわかるように、簡単に面白くわかりやすく解説してほしい。
そう思って、TCAサイクル、簡単でわかりやすい、というキーワードでググったところわりとわかりやすいサイトが… 【キャラ化】クエン酸回路(TCAサイクル)をわかりやすく解説! (laurel-note.blogspot.com)
でもきっとこのブログも、もっとわかりやすく簡単に書いてほしいって思っている人は多いはず(◎_◎;)💦
反芻動物における肝酸化の制御
・HOT理論によれば、飼料由来の、あるいは体内貯蔵物から動員され肝臓で酸化される可能性のある燃料は反芻動物の飼料摂取量に影響を及ぼす可能性がある (Allen et al., 2009; Allen and Bradford, 2012)。
・Gualdrón-Duarte and Allen, 2017, Gualdrón-Duarte and Allen, 2018 の研究により、プロピオン酸、グリセロール、乳酸、グルコースを等エネルギー的に腹腔注入すると、他の代謝物よりもプロピオン酸を注入した牛のDMIおよび総ME摂取量の減少が顕著で、グルコン生成前駆物質の代謝がDMIおよび場合によっては総ME摂取量に影響を与えることが示された。
・これらの結果は、プロピオン酸のようなTCAサイクルのanapleroticである肝臓に取り込まれた燃料が、アセチルCoAの酸化と摂食低下(Gualdrón-Duarte and Allen, 2017)を促進し、おそらく肝エネルギーチャージの増加と脳へリレーされる満腹シグナルを介していると示唆された。
Symposium review: Fueling appetite: Nutrient metabolism and the control of feed intake – Journal of Dairy Science
つまり、反芻動物では、満腹に影響する代謝物として「プロピオン酸」が有力で、それは肝臓でセンシングされて末梢神経でシグナルを送ってるんではっていうことと理解。これは現場での色々な事象と合わせて考えても腑に落ちるんじゃないでしょうか。
おさらいですがプロピオン酸は、牛は肝臓で糖新生されて「グルコース」として使われていきます。こういう基本もたまに確認しないと、全部忘れそうなので、自分のために復習!


なんか給与試験の文献と違って、こういう理論の話って、とても読みにくくとっつきにくいです…😿でも、HOT理論って、飼料摂取量に影響する要因ってもちろん、最初に出てきた腸管のキャパや、エネルギー要求量も影響するよね?そこにHOT理論も絡んでるという一要素よね?
そのへん、よくわからないので、次に、今回沢山引用されている、ミシガン州立大のAllen M.S.の文献をこれから読んでみようと思います。
忘備録後で読む
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