トウモロコシ子実の分析

アメリカ4大ラボ

突然ですが、アメリカには飼料分析のための、カンバーランド バレー アナライティカル サービス(CVAS)、デイリーワン(Dairy One)、 デイリーランド(Dairy Land)、ロックリバー(Rock River)の4大ラボと呼ばれる分析センターがあります。

日本にサテライトラボがあるのは、デイリーワン→全酪連さん、CVAS→丹波屋さん、でしょうか。後は日本独自でいうと安定の十勝農協連!去年あたりからNDFの3ポイント消化性も見れるようになったんでしたね。

私はDairyoneをメインで使ってましたが、プロラミン蛋白の分析やin vitro starch7hDやら、糞の消化性分析をカンバーランドに頼みたくて、CVASへの頼み方をコンサルさんに教えてもらい、ここ1-2年はCVASにも出してました。今はコロナの関係でアメリカに郵便が送れません・・・

今年のADSAではトウモロコシ子実の分析についてのトピック

今年のADSA(アメリカ酪農学会):要旨リンクこちら ではCVAS、デイリーランド、それぞれが、今のトウモロコシ子実(特に自給飼料系;デントコーンやHMCなど)の分析法は乾燥して粉砕している時点で現物と違ってくるし、今よりもっと良いデンプン消化性の分析方法があるかもよ、という報告をしていました。アメリカの酪農の記事などを見ると、やはり乾燥工程のやり方でIVSDに影響が出ることもあるようです。

CVASもデイリーランドも、どちらもデントコーンの子実を乾燥せずにそのまま(もしくは半分にカットしたり四分割したりなるべく加工を少なくして)分析する新しい手法について報告されており、CVASではfatty acid/starch solubility(可溶性脂肪酸、可溶性デンプン)、Dairylandはgas production(ガス産生)についてでした。

下のT123のイントロが分かりやすかったので引用

はじめに:ゼインマトリックスはトウモロコシの実の成熟期間に形成され、微生物のデンプンへのアクセスを制限するためデンプン消化率を低下させる。ラボ分析のための乾燥と粉砕は、このデンプン消化率測定に影響を及ぼしその結果を混乱させる一因となっている。

T123 Effects maturity and storage method on gas production kinetics of corn grains.

Dairyland : In vitro gas production ☞Fermentrics

212 In vitro gas production detected differences among corn hybrids at silage maturities.

題名:インビトロガス産生はサイレージの成熟期におけるトウモロコシハイブリッド間の違いを検知する

筆者:N.Schlau ,D.R.Mertens ,D.Taysom.

所属:Dairyland laboratories Inc,Arcadia,WI. Mertens innovation and Research LLC,Belleville,WI.

☞デントコーンサイレージの子実を4分割してガス産生度を測定、品種間の発酵性の違いを定量的に評価可能であった。


T123 Effects maturity and storage method on gas production kinetics of corn grains.

題名:トウモロコシ子実のガス産生速度に及ぼす成熟度と貯蔵方法の影響

筆者:N.chlau1.,D.R.Mertens2 and D.Taysom1.

所属:1 Dairyland Laboratories Inc., 2Mertens Innovation and research LLC,Bellecille,WI.

☞デントコーンサイレージの子実を成熟度、保管方法を変えて、ガス産生度を評価。成熟度、貯蔵によるデンプンの発酵性の違いを評価可能であった。

DairylandのHPより 分析項目

Gas productionの仕組みは、Fermentricsと呼ばれるin vitroの分析系で試験管内でルーメン液とバッファーを混ぜてそこに試験飼料を入れて240時間の発酵性(ガスの産生等)をモニターし、定量的に評価する仕組みです。

ちなみにMertensってあのpeNDFのMertensです・・・!(まだ現役なの、すごい

403 Forbidden

CVAS ☞starch solubility

T120 Assessing fatty acids and starch solubility in corn grain and corn silage using in vitro method.

題名:in vitro法を用いたトウモロコシとコーンサイレージにおける可溶性脂肪酸と可溶性デンプンの評価

筆者:X.Huang, J.de Souza.,and R. Ward.

所属:Cumberland valley analytical services,Waynesboro,PA.  Perdue Agribusiness LLC.Salisbury MD.

☞トウモロコシ(HMC、デントコーン)の可溶性脂肪酸、可溶性デンプンの評価はルーメンでの発酵性や生体内水素添加による乳脂肪低下リスクの評価に用いることが出来る可能性、飼料原料の評価として役立つ。


可溶性デンプン分析とは、デンプンの利用性と分解性をより理解するためにサンプルから容易に溶ける可溶性デンプンを分析することで、ルーメン内に急速に放出されるデンプン量がわかる、サンプル間のデンプン分解の定量化として利用可能、とのこと。

「可溶性デンプン」は、入手したままのコーンサイレージまたはトウモロコシ粒を室温の水で洗浄した際に、50ミクロンのふるいを通過するデンプンの量として定義。デンプンは可溶化されていませんが、洗い流され、懸濁している。

CVAS Teq note
https://www.foragelab.com/Media/Soluble%20Starch%20Technical%20Note%20August%202019.pdf
https://www.foragelab.com/Media/Soluble%20Starch%20Technical%20Note%20August%202019.pdf

IVSD

これまでに日本で海外ラボ分析を使っていた方は、デンプンだともれなくインビトロスターチ消化率(IVSD7h)の値を使ってきたかと思います。CNCPSモデルに搭載されているのもこちらですし、なかなかこれがゴールドスタンダードから外されることは、そうそう、なさそう。

たしかに乾燥して粉砕して、だと現物そのものの評価にはならないのですが、同じ条件で標準化されているから、比較する上では同じラボに頼めばそんなに矛盾を感じたことは、私はありませんでした。(同じサンプルを違うラボに頼むと、結構、ん?!みたいな値の違いはあったり)

ただしたまに「ん?!」みたいな分析値もあったり。あとは、輸入のドライコーンサイレージなんかはIVSD測定してもらえなかったので、そういったものの評価をしてみる上ではこういう新項目にトライしてみてもいいかな。

さすがラボがいくつもあるアメリカ、ラボごとに評価方法の研究も進んでいるようです。可溶性デンプン測定、もしくはFermentricsによってさらに現物に即した評価方法になるんでしょうか。

私は可溶性デンプンもFermentricsも、トウモロコシやデントコーンで頼んだこと無いですが、同じサンプルを出して、各ラボの結果を比べてみたいです。

スターチ消化率というのは測定要素がこれまでもたくさんあって、どれもその1要素である、という考え方をされてきましたが、さて、IVSDよりもメジャーになる分析項目はあるのでしょうか。。。

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