Calf Note #222 -子牛の下痢は将来の生産性に影響する

以下は、Calf Note #222 – Calf diarrhea affects future productivity – Calf Notes.com を翻訳したものです。原文著者Dr. Jim Quigley の許可を得て日本語訳を掲載しています。

概要:哺乳期の呼吸器病は将来の乳量には影響は見られなかったが、哺乳期の下痢は初産で平均 325kg 少ない305 日成熟換算乳量(305ME)となった。

以下本文開始


はじめに

最初の数ヶ月間の子牛の育て方は、子牛の健康状態や生産性に長期的な影響を与える。 いくつかの研究により、生後早期の病気の発生は成長を遅らせ、子牛が繁殖可能な年齢を遅らせ、さらに初産牛の乳量を減少させることが明らかになっています。
ミシガン州立大学の研究者が Journal of Dairy Science に発表した最近の研究では、離乳前の子牛の病気がホルスタインの乳牛の将来の生産性に悪影響を与えることが改めて示され、子牛管理の重要性が改めて強調されています。

研究内容


研究者らは、アメリカ中部に位置するミシガン州のある大規模酪農場で生まれた子牛をモニターしました。
この農場には平均 3,500 頭のホルスタイン種の泌乳牛がおり、平均体重は 12,250kg/ 牛でした。
子牛は繁殖期(12 ヶ月齢以上、363kg 以上)、分娩期、初産期まで、通常の近代的な給餌条件に従って飼育されました。 この研究にはもともと 4,489 件の記録があり、酪農家の DairyComp 305 データベース のデータを使用しました。 雄牛の子牛のデータは、不完全な記録や不正確な記録と同様に除外されました。

記録は飼育期間中、そして最初の泌乳期まで維持されました。離乳時の平均日増体は出生時体重と離乳時体重を基に算出しました。初回授精時月齢、初回授精月齢、分娩時月齢、授精回数 305 日成熟換算乳量 (305 日 ME )を使用しました。
牛呼吸器疾患(BRD)、下痢、BRD+下痢、その他あらゆる疾患に罹患した子牛を対象とし、疾病の測定は離乳期(70日齢)まで収集しました。

結果

BRD、下痢、離乳前疾患の発生率はそれぞれ21.4%、40.7%、53.6%であった。
1回目発生平均日齢はそれぞれ33、9、9日齢であり、一般に下痢は生後早期に、BRDはやや遅れて発生する傾向があることが示されました。 離乳前の罹患率は50%以上であったが、子牛の死亡率は2%未満でした。

BRD下痢何らかの疾患
発生率21.4%40.7%53.6%
初回発生日齢33d9d9d

離乳前の病気は、子牛が繁殖や分娩に至らないリスクを増加させました。

子牛が BRD に罹患していた場合、繁殖に至る可能性は約14% 低くなりました。 一方、下痢は子牛が繁殖期に達するかどうか、また初産に達するかどうかに著しい影響を与えませんでした

子牛が BRD に罹患した場合(407 vs 406 日齢)、および BRD + 下痢の場合(408 vs 406 日齢)、初回受精日齢が高くなる傾向があったが、 下痢や他の病気による影響はなかった。
子牛は離乳前に下痢をしていた場合(431 vs 426 日齢)、および何らかの病気にかかっていた場合(431 vs 424 日齢)、より高い日齢で妊娠することがわかった。
初産日齢は BRD(704日 vs 699日)、下痢(704日 vs 697日)、BRD+下痢(708日 vs 699日)、あらゆる疾病(704日 vs 696日)であった場合に高くなった。
離乳前に BRD、下痢、BRD + 下痢、何らかの疾病の既往がある子牛は、これらの疾病がない子牛よりも高い日齢で出産したが、その差はわずか 4 ~ 9 日であった

子牛が離乳前に下痢をしていたと報告された場合、初産では平均 325kg 少ない305 日成熟換算乳量(305ME)となった。

まとめ

他の多くの研究と同様、ミシガン州立大学のこの興味深い研究は、未経産牛の子牛の健康が将来の生産性に重要であることを示しています。
優れた栄養、進歩的な管理プログラム、注意深い健康モニタリングに投資することで、未経産子牛が搾乳牛になったときに、遺伝的潜在能力を発揮して、確実に利益を得ることができます。


本文終了

哺乳期の下痢、肺炎が成牛になったときにどんな影響があるか。とても気になるトピックですがこれまであまり明らかにされていませんでした。

引用文献はこちら:Effect of preweaning disease on the reproductive performance and first-lactation milk production of heifers in a large dairy herd – Journal of Dairy Science

下痢

これによると、哺乳期の下痢繁殖への影響は少ないようですが、その後の増体、乳量に及ぼす影響大きそうです。今のところ、哺乳期増体(ADG)が高いほど乳量が増加するとされるため、下痢による増体の停滞が、その後の乳量低下につながるという仮説が有力なようです。

今回の記事本文中には増体の数字などは書いていなかったので、以下引用文献をもう少し読んでみました。

離乳前に BRD または BRD +下痢の既往がある未経産牛とない未経産牛では、ADG と 305ME に統計的な差はありませんでした
しかし、下痢や何らかの疾病に罹患した未経産牛は、離乳時の ADG が低く、初乳期の 305MEも低かった。それでも、罹患牛と非罹患牛の差は、ADGで50 g/d、305MEで325 kgが最大であった。

Effect of preweaning disease on the reproductive performance and first-lactation milk production of heifers in a large dairy herd – Journal of Dairy Science

グラフで見ると以下の通り引用文献からそのまま持ってきています。

Diarrhea(下痢),YESで、ADGと305MEのP値が有意に低くなってますよね。

後ろ向きコホート研究のため下痢の時抗生物質を使ったか否かは分けて解析できなかったようです。また文献のディスカッション部分で他の文献での先行内容を確認すると

・スウェーデンの牛群では、生後 90 日以内に下痢の既往がある未経産牛は初産乳量 344kg 減少(Svensson and Hultgren, 2008)

子牛の時に抗生物質の投与を受けた未経産牛は、抗生物質の投与を受けた記録のない子牛に比べて初産乳量493kg 生産量が減少(Soberon et al, 2012)

下痢歴のある未経産牛とない未経産牛の間で初産乳量の差が検出されなかった研究もある(Warnick et al., 1995; Aghakeshmiri et al., 2017).

Effect of preweaning disease on the reproductive performance and first-lactation milk production of heifers in a large dairy herd – Journal of Dairy Science

ということで、未だに「下痢」というラフな括りではいろいろな結果になりますが、増体に影響をするようなシビアな下痢はその後の乳量に影響すると考えていいようです。

BRD(呼吸器疾患)

一方で、BRDの履歴に関連して、分娩の確率が14%減少したこと、-BRD未罹患の未経産牛が1.16倍分娩しやすいことに相当-と、初産年齢の5dの遅延を検出しただけ、とのことでした。

これについては、著者らは

・子牛の肺炎罹患時期が離乳間際が多く離乳時体重に影響が少なかった可能性

・農場専属獣医師が2名おり早期発見、治療プロトコルが確立され適切に運用されていること

により増体への影響が少なかった可能性もある、と記載しています。

これについても先行研究では、初産乳量に影響有無についていろいろな結果がありますが、いずれも大規模農場1つの結果を解析しており、農場ごとの特性も少なからず反映している可能性がありそうでした。

子牛の疾病、肺炎と下痢、を防ぐ・症状を軽減させる、というのは当然ながら重要ですが、費用が掛かる対策を打つときなどは、費用対効果を価格で知りたいもの。

1つの大規模農場での解析結果ではありますが、哺乳期の影響が直結することを改めて認識できます。

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